昼夜問わず「スマホを使い続ける生活」の大弊害

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2019年末、中国・武漢市に端を発したといわれる新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の爆発的流行は、またたく間に世界各国に広がり、世界的大流行(パンデミック)を引き起こしました。私がこの文章を書いている2020年末現在も、まだ終息の見通しがついていません。そして、この新型コロナの蔓延は私たちの生活を根底から変えてしまいました。
2020年春に政府から出された緊急事態宣言は、海外のような厳しいロックダウンの措置こそありませんでしたが、不急不要の外出や都道府県境を越える移動の自粛を求められて、商店や飲食店は休業または営業時間短縮を余儀なくされました。手洗いやマスクの着用が呼びかけられ、企業においても、可能な限りネットを利用して自宅で仕事をする、いわゆるリモートワークをおこなうところが増えていきました。
増える「コロナうつ」「コロナストレス」
こうした措置は時間の経過とともに緩和されたものの、新型コロナの流行が収まったわけではなく、まだまだもとの生活様式に戻るまでには時間がかかることでしょう。あるいは、二度と戻ることはないかもしれません。そんな状況のもと問題になっているのが、私たちのメンタルヘルスです。これまで心身ともに健康だった人が、うつうつとして沈み込んだり、家庭内暴力を起こしたりという話をよく耳にするようになりました。
新型コロナの蔓延によってストレスを受け、「コロナうつ」「コロナストレス」と呼ばれる症状に悩まされている人が増えているのです。つまり、新型コロナによって、ストレスに悩まされる人が増えているといってよいでしょう。
その原因は、大きく分けて2つあると考えられます。1つは、新型コロナそのものに対する不安です。誰しもがかかる可能性がある病気ですし、重症化すると苦しいだけでなく命にかかわる恐れもあります。特効薬もまだないことから、不安を抱くのは無理もないかもしれません。さらに間接的な影響として、コロナ禍による収入減や失業といった経済的な不安も見逃せません。
もう1つは、自粛生活における生活習慣の変化があります。ウイルスを避けようと自宅にひきこもった結果、運動や日に当たる時間が減ったり、他人と会話する機会が減ったりすることで、メンタルに不調が出てきたという人がかなり多いように見受けられるのです。
実は、ひきこもり生活による運動不足、太陽光を浴びない生活、他人との会話のない暮らしというのは、セロトニンという神経伝達物質(脳内物質)を減らしてしまう要素になるのです。
セロトニンは脳内にあるセロトニン神経から分泌され、私たちの精神状態を健やかに保つという大事な役割を果たしています。セロトニンが脳内にたっぷり存在していれば、私たちはちょっとやそっとのストレスにも動じることはありません。イヤなことがあってもすぐに気分転換できたり、失敗してもくじけずにチャレンジを繰り返せる、いわば「ストレスフリー」で過ごせるのは、セロトニンのおかげといってもいいでしょう。
セロトニン神経は、太陽の光を浴び、適度な運動をして、周囲の人と楽しく触れ合うことで活性化されていきます。しかし、「新しい生活様式」が求められ、ひきこもり生活が続いて、孤独な状態で家の中にじっとしていると、セロトニン神経はしだいに弱っていき、セロトニンの分泌量が減ってストレスに弱い脳になってしまいます。セロトニン神経はストレスに弱いという性質を持っているのです。
新型コロナの自粛生活によって、コロナうつ、コロナストレスというメンタルヘルスの問題が浮き彫りになったのは、セロトニン神経の働きからすると当然といってもいいでしょう。
「長期の引きこもり」が心を蝕む
セロトニンがさらに欠乏していけば、朝の目覚めが悪くなり、イヤなことがあっても気分転換をしにくくなります。テレビやネットで流される暗いニュースを見聞きしては、ネガティブな気分になって落ち込むばかり。そうなると、外に出て元気に動き回ろうとも、友人と会って話そうとも思えず、さらに悪循環に陥ってしまいます。やがては、ささいなことでキレやすくもなるでしょうし、自律神経失調症にもなってしまいます。最終的には、本当のうつ病になる恐れもあるのです。
これまでも、私はセロトニン神経の研究者として、パソコンやスマートフォン中心のデジタル生活がメンタルヘルスに悪影響を及ぼすということを主張してきました。それでもまだ、コロナ以前では、会社への通勤や買い物がそこそこ運動になりますし、会社の同僚や近所の人とのおしゃべりが、なんとかセロトニン神経の活性化に役立っていました。
しかし、新型コロナによって、そうした生活習慣も制限されてしまったのです。これまで意識していなかったようなちょっとした生活習慣が、実はメンタルヘルスにとって重大な問題を引き起こすと、多くの人々は新たに認識したのではないでしょうか。
私たちは、ウイルスに感染しないために家にひきこもりましたが、それが長期間続くと、元気だった人が病んでしまうという状況を目の当たりにしました。
逆にいえば、「新しい生活様式」のもとでも、セロトニン神経をうまく活性化させる工夫ができれば、私たちは「ストレスフリーな脳」を手に入れることができ、不安に振り回されることがなくなるのです。
もちろん、家にひきこもっていても、なんとか生活を維持できているのは、デジタル技術の発達のおかげです。家にいながらにして、仕事、買い物、情報収集、友人とのやりとり、そして遊びに至るまで、手元にあるパソコンやスマホでできるようになりました。それですべてができるのですから、すばらしい発明であることは間違いありません。
しかし、その便利さが諸刃の剣となり、セロトニン神経を弱らせる原因となっています。そして、セロトニンがきちんと出ない生活を続けていることが、イライラを引きずったり、睡眠の質を低下させたりといった状況を生み出す理由にもなっています。
かといって、デジタル機器なしでは仕事も生活もできないことは明らかです。重要なことは、パソコンやスマホとのつきあい方を学ぶことです。これが、現代人にとってストレスフリーに生きるための急務といってよいでしょう。
「常にスマホをいじる生活」の弊害
私たちは、朝起きてから夜ベッドに入るまで……、いやベッドに入ってからもスマホをいじる生活にどっぷりとつかってしまいました。これは、大昔から生きてきた人間の営みからすると、とんでもないことなのです。
昔の人間は、太陽が出ると外に出て体を動かして、狩りをしたり畑を耕したりしていました。汗水たらして、体を動かして、太陽も浴びるというのは、セロトニン神経が自然に活性化される暮らしです。そういう生活の中で、人間は1万年以上も生きてきたのです。そんな暮らしが、つい20年ほど前まで続いていました。
ところが今は、机の前に座りっぱなしで何でもできるようになりました。太陽の光を浴びず、体もほとんど動かさない。それでも仕事がきちんと成り立ち、お金が入るという便利な社会ができ上がりました。
コロナ以前は外出や通勤が気分転換や運動になる面もありましたが、コロナ禍ではそれもできなくなってしまいました。それでは、セロトニン神経を活性化するいとまがありません。ストレスはただたまる一方になってしまったのです。
ストレスが加われば、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが副腎皮質から分泌されることはよく知られています。同時に、セロトニン神経が抑制されてしまうこともわかっています。つまり、ストレスが加わることでセロトニン神経が弱り、結果としてストレスに押しつぶされやすくなってしまうわけです。
有田 秀穂 : 医師・脳生理学者

悪事暴いても「裏切り者」内部告発の悲しい現実

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告発後に寄せられた数百通の罵詈雑言
北海道警察の元釧路方面本部長で、警視長まで務めた原田氏は2004年2月、記者会見を開いて道警の組織的な裏金づくりの詳細を明かした。大幹部だった人物が経験に基づいて語る詳細な手口の数々。自らも受益者であったことを隠さず、道警に向けては「今さら内部調査など必要ない。幹部は全員熟知している」と指摘したのである。
原田氏の行動は市民らの支持を受ける一方、自宅には原田氏を批難する封書やはがきが殺到した。その数は、数百通。その一部を原田氏は今も保管している。いずれも、罵詈雑言の嵐である。
以下、それぞれの内容を抜粋しよう。
古今東西 その歴史において 裏切り者の行く末 その運命は決まって明らかだ 偽善者よ 歴史に学べ 墓穴を掘って自ら滅ぶは枚挙に暇なし 残された人生 やがて家族の心も離れ 独り悶々と悩み苦しむ事になり 厚顔無恥に生きるのみである」
「いい歳をして、かつての上司、同僚、部下や組織にどれほどの迷惑や不快を与えているか考えたことがあるか…裸の馬鹿殿様とは貴様のことだ。同封の新聞写真を見れ、このアホ面、このアホンダラ者」
「恩を仇で返した卑劣極まりないゴキブリ原田」
「ウジ虫野郎!」
「ヤクザでも一宿一飯の恩義に生きるを仁義とする。然るに、恩を仇で返したお前はヤクザにも劣る獅子身中の虫だ」
「稀代の悪徳ゴキブリ警察官!」
「汚れた自分のケツも拭かずに、他人の尻が汚いとか臭いとか言えるか馬鹿者!」
――内部告発の直後、非難の連続だったわけですね。当時はインターネットもさほど普及していませんでしたが、ネットやSNSが隆盛する現在ならもっとすさまじかったかもしれません。こうした反応は予想していたのでしょうか。
それらの手紙だけではありません。嫌がらせの電話も来ました。道警内では「原田のおやじは狂った」とずいぶん言われたようです。札幌の高級住宅街・円山地区に裏金で豪邸を建てたとか、愛人がいるとか。そんなうわさも流されました。
原田宏二(はらだ・こうじ)/元北海道警察警視長。著書に『警察内部告発者』『警察崩壊』『警察捜査の正体』など(撮影:フロントラインプレス
当然ながら、誹謗中傷があることは覚悟していました。警察関係者からの、です。
私は在職中に裏金の一部を受け取っていましたし、必ずしも品行方正な模範的な警察官ではありませんでした。道警がやろうと思えば、犯罪をでっち上げて私の身柄を拘束することもできたでしょう。
ですから、弁護士の助けが必要でした。実際、裏金告発の記者会見をやる前は弁護士と入念に打ち合わせました。
むしろ、嫌がらせよりも心配だったのは、裏金を立証する物証を持っていなかったことです。報道機関や道民が信用してくれるかどうかも心配でした。在職時代から書いていた日記はありましたが、(真実のお金の流れを記した)裏帳簿とは性質が違う。日記は裏金の存在を直接裏付けるものではありません。立証価値は低いのです。
のちに道警は内部調査を実施しましたが、ベースにしたのは道警に保存されていた正規の会計書類です。正規の書類には真実が書かれていないのですから、それをいくら調べても裏金システムの真実は解明できません。
警察側の意をくんだジャーナリストへの違和感
――会見当日にも忘れられない出来事があったと聞きました。
記者会見は午後の予定でしたが、午前中に開催の予告を道警記者クラブに連絡しました。その直後、何人かの新聞記者やジャーナリストなどから「会見は中止したほうがいい」と連絡があったんです。携帯電話で延々と説得されて……。
会見に同席予定の弁護士の事務所に来た者もいます。事務所のドアの前で、涙を流しながら「やめてください」と。会見場だった札幌弁護士会館に行くと、会見が始まる前にも「今からでも遅くはない、ここを出よう」と説得してきたジャーナリストもいます。
驚きでした。ジャーナリストであれば応援してくれるものと思い込んでいました。実際は、警察側の意をくんでの動きだったようです。
会見が終わって弁護士事務所に戻り、打ち合わせを終えて外に出ると、階下には、またジャーナリストが待っている。彼は「とにかく奥さんを連れて札幌を離れろ」と言う。
そんなことはできません。もし、私が姿を消せば、記者会見そのものの信憑性が疑われます。いったい、ジャーナリストとは誰のためにあるのでしょうか。私が「犬も飼っているのでそんなことはできない」と断ると、彼は「犬は自分が預かる」とまで言いました。
――内部告発には妨害や嫌がらせもあるし、そうとうな覚悟が必要なわけですね。
内部告発にもいろんな方法があります。まずは、組織内の通報窓口に連絡すること。これは、公益通報者保護法に規定された枠組みです。次に監督官庁への通報。警察や検察もこの範疇に入るでしょう。
最後が報道機関です。私が会見した2004年2月時点では公益通報者保護法は施行されていなかったので、組織の不正をただす環境は当時より整備されたとはいえるでしょう。
内部告発者の動機は一様ではありません。当然、「あいつだけは許せない」という私憤に突き動かされたケースもある。
ただし、本当に組織や社会の是正を願っての内部告発なら、通報先を慎重に考える必要があります。監督官庁や報道機関は本当に動いてくれるのか、組織内の通報窓口は正常に機能するのか。それをきっちり見極めないと、逆にしっぺ返しを食らう恐れもあります。
内部告発者を最後まで守るシステムはない
私の会見後、各地の警察で相次いで裏金が発覚しました。少なくとも12府県で警察官OBによる内部告発があり、1件だけ現職警察官(巡査部長)による告発もありました。告発の動機は本人だけが知っていることですが、それら内部告発者の多くは線香花火のように消えてしまいました。
報道機関の関心はすぐに薄れます。内部告発はいっとき、なのです。内部告発者を最後まで守ってくれるシステムはありません。告発後は生活保護で暮らした者もいると聞きました。内部告発者は、自らが自分を守る覚悟が必要だと思います。
私が告発した警察の裏金システムはどうなったのでしょうか。少なくとも、私の在職中のようなやり方はしていないでしょう。ただ、何らかの方法で続けている可能性はゼロではありません。
何よりも気になるのは、法の執行機関である警察の内部で「(治安維持のためなら)多少の法令無視、違法行為は許される」といった風潮が常態化しているのではないか、ということです。こうした状況に対して、警察をチェックする公安委員会、検察、裁判所、議会といった公の機関の機能は形骸化しています。報道機関の監視機能も弱まっています。内部告発を取り巻く情勢は、極めて厳しいことを知るべきです。
――そうした現実があるにしても、公益にかなった内部告発は欠かせない、と。
社会人であれば、自らの組織で不正を目にしている人もいると思います。私は警察以外の組織をほとんど知りません。民間企業での経験は、天下りした生命保険会社だけです。社員は優秀で、警察に比べて職場の風通しもよかったと思います。仕事の進め方について上司に意見を具申している姿も、よく見ました。時折、社員による不祥事もあり、会社の幹部からの相談も受けました。
2020年6月に公益通報者保護法が改正され、通報者の保護が強化されました。法によると、通報先は、内部通報の窓口、監督官庁や警察、検察、報道機関ですが、それぞれ要件があります。
不正を目の当たりにした人は、それが社会的に非難を受けるような事案ならば、まずは、信頼できる上司がいれば相談してはどうでしょうか。真っ当な会社であれば、必要な改善が行われるでしょう。無視されたり、通報者への不利益な処分が行われたりする会社は、将来、経営がうまくいかなくなる可能性が大きいと思います。
まずは信用できる弁護士に相談してみる
2007年、北海道で牛肉ミンチ偽装事件が発覚したことがあります。それを内部告発したのは偽装した会社の常務。彼と後に話して知ったのですが、最初は監督官庁や警察に偽装肉のサンプルを持って通報したのに、相手にされなかった、と。報道機関もなかなか腰を上げなかったそうです。
つまり、不正を告発しようと思っても、個人には官庁や報道機関の姿勢を知ることが困難なわけです。監督官庁や報道機関に通報するなら、まず、信用できる弁護士に相談してはどうでしょうか。各地の弁護士会には相談窓口もあります。
――原田さんは在職中に裏金是正の声を上げることができず、勇気をふるって告発した後は誹謗中傷にもさらされました。その人生に悔いはなかったのでしょうか。
もちろん、悔いなしです。私の場合は、オンブズマン関係の弁護士の支援で2004年10月に「明るい警察を実現する全国ネットワーク」を結成し、その代表を務めました。それがきっかけになって、全国で警察改革を訴える機会を与えてもらいました。2007年2月には「市民の目フォーラム北海道」を立ち上げ、警察相手の国賠訴訟の支援や弁護士会などが主催する集会での講演、警察官の不祥事などの取材対応に当たってきました。
とくに印象深いのは、大学での講義です。「警察の実情や課題を話してほしい」と頼まれ、北海道大学など地元の大学、早稲田大学慶應義塾大学立教大学など首都圏の大学、関西圏や四国・九州の大学でも講義しました。
警察の抱える課題を警察法警察官職務執行法なども交えて授業するケースは、過去にあまりなかったと思います。リアクション・ペーパーを使って学生からは「警察の課題など考えたこともなかった」「組織や構造の問題点を知ってびっくりした」という声が相次ぎました。
――自らが属する組織の異常性やおかしな論理には、なかなか気づくことができないのではないか、と思います。
私の告発は道警組織から見れば「裏切り」だったでしょう。誹謗中傷の手紙にも、「裏金づくりは組織のため」というものが多くありました。犯罪捜査においても、「捜査は組織的に行う」とされていました。不祥事の隠蔽も事実を歪曲して発表するのも、組織防衛のためとされていました。
しかし、よく考えてみると、警察本部や警察署の建物があっても警察官という人間がいても、“警察”という組織は実在しないのでは、と思います。多くの警察官は「何かあれば組織が守ってくれる」と信じています。その組織とは何でしょうか? 誰でしょうか?
今、『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を読んでいますが、その中に「われわれが当たり前のように信じている国家や国民、企業や法律、さらには人権や平等といった考えまでもが虚構であり、虚構こそが見知らぬ人同士が協力することを可能にしたのだ」とあります。社会にとって組織という虚構は必要だという意味でしょうが、それと同じです。
私の知る多くの警察官はまじめで誠実です。取り調べでは容疑者に向かって「うそをつくな」と自白を求めます。おそらく、自分の子どもがうそをついたときも厳しく叱るでしょう。
しかし、警察官は、組織という仮面を被ったときには平気でうそを言います。警察組織を支えているのは階級制度であり、上司の命令は絶対というルールがあります。上司の誰かが「うそを言え」と命令すれば全員がうそを言います。
暗黙の命令もあります。警察が「組織」という言葉を使うときには、不都合な事実を隠すためだと考えたほうがいいかもしれません。そして大なり小なり、こうしたことは警察組織だけの問題ではないのだと思います。
警察官と市民との距離がいっそう遠のいた
――最後にもう一つ質問を。政権でも中央省庁でも、もちろん企業においても、疑惑や不正は後を絶ちません。それを知った組織人は、いったい、どうすればいいのでしょうか。組織と個人との関係において、「正しいこと」とは何でしょうか。正しい社会とは何でしょうか。
正しい社会とは何か。難しい質問です。私には大きすぎて答えられません。ただ、警察官だった立場から言わせてもらうと、私は正義のために仕事をしたことはありません。多くの警察官もそうだと思います。警察官の仕事は法の執行です。法律を順守し、いかに適切に執行するか。それが何よりも大切なことです。
最近の警察をみていると、正義を掲げながら、法的な根拠を欠く行為を堂々とやったり、権限の逸脱ではないかと思える動きを行ったり、そういう事例は目につきます。加えて言えば、私が現場で仕事をしていた時代と現在とを比較すると、警察官と市民との距離がいっそう遠のいたように思います。
警察官が徒歩でパトロールする姿は、ついぞ見かけません。交番のおまわりさんのパトロールもパトカーです。市民と声を交わすことはほとんどありません。犯罪捜査のやり方も随分変わりました。事件が起きれば、防犯カメラの映像探しが最優先です。地取り(事件現場周辺での聞き込み捜査)や聞き込みは二の次です。「現場百回」も死語になりました。「市民警察」も死語になったのかもしれません。
私の記者会見からすでに17年の歳月が流れました。しかし、最近になっても新聞社やテレビ局の取材を時折いただく。断りきれない講演もありました。今年も1月に北海道大学に留学中の先生から「警察の監視」に関するインタビューを受けました。ただ、私も83歳です。おそらく、このインタビューが公では最後の活動になると思います。
取材:フロントラインプレス(Frontline Press)

「いまは保育園の清掃」続く減便、冬ボーナスゼロでも私がCAを辞めない理由

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ボランティアで保育園の清掃
2020年7月15日、千葉県成田市にある成田市立新山保育園はいつもと違う雰囲気に包まれていた。ANAグループに勤める13名が、園の清掃をするために集まっていたのだ。
ボランティアの募集があったのは6月。コロナの影響で欠航や減便を余儀なくされている航空業界では、業務が大きく減少。そうした人材を活用して地域貢献ができないかと、ANAJAL、NAA(成田空港株式会社)の3社が成田市に申し出て、このボランティア活動が実現した。期間は約1カ月。3社が輪番で成田市内の保育園の清掃や除草作業を行った。
保育園の清掃をするANAのスタッフ。(写真提供=ANA
参加者のひとり、城戸偉久美は入社3年目のグランドスタッフである。大学時代は英語コミュニケーション学科で学び、英語力が活かせて、しかも非日常的な感覚が味わえる職場で働きたいと考えていた。実家のある八街市から近い成田空港は、このふたつの希望を完璧に満たしてくれる職場だった。
ANAのグランドスタッフは憧れの仕事でした。就職が決まったときは、両親がとても喜んでくれましたね」
園児の表情に心洗われる思い
もうひとりの参加者、坂井優は羽田をベースに勤務する入社5年目のCAだ。三重県名張市にある実家は飲食店を経営しており、大学時代を通して実家で接客のアルバイトをしていた。また、カナダとオーストラリアへの留学経験があり、「接客業を極めたいという思いと、海外が好きという気持ちを足し合わせたら、CAという答えが出た」という。
窓の清掃をする城戸さん。(写真提供=ANA
清掃ボランティアに参加した動機は、城戸も坂井も共通している。少しでも社会に貢献している実感を得たいという気持ちが、ふたりの背中を押した。坂井が言う。
「私が網戸を拭いていたら、園児のみなさんが興味津々という顔つきでこちらを見ているんです。不安で気持ちがズーンと沈みそうになる状況の中で、むしろこちらの心が洗われる瞬間をいただきました」
城戸は同じANAグループの企業でも、日頃は接点のない職場のメンバーと話せたことが救いになったという。
「客室乗務員やカーゴサービス担当、デューティーフリーを担当している部署のスタッフもいて、それぞれの職場の状況を聞くことができました。『状況に屈しないで、それぞれができることをやろう』と語り合ったことをよく覚えています」
閑散とした成田のロビー
とは言うものの、ANAグループが置かれた状況は極めて厳しい。先ごろ発表された2020年4月~12月期決算は、3095億円という過去最大の赤字(純損益)。国際線の旅客数は前年同期比で96%の減。国内線も72%の減と壊滅的な状況である。2021年3月期連結決算の最終利益は、実に5100億円という巨額の赤字を見込んでいる。
チェックインの業務を行う城戸さん。(写真提供=ANA
夏のボーナスは半分、冬のボーナスはゼロにし、社員の年収を3割減らす大胆な人件費削減策を断行しているが、国際航空運送協会の予測では、旅客需要が2019年のレベルまで回復するのは2024年になる見込みだという。
城戸が言う。
「私は外航(外国の航空会社のこと)の受託業務を担当していますが、緊急事態宣言の出た4月5月はほとんど飛行機が飛びませんでした。閑散とした成田のロビーを見て、とても寂しい気持ちになりました」
城戸が担当するシンガポール航空は、コロナ以前は1日に3便飛んでいた。午前中に1便、午後に2便の搭乗手続きや搭乗口での案内業務をこなすことで、1日が回転していた。
「飛行機が飛んでこその仕事なので、4月5月はこのまま仕事がなくなってしまうのではないかと不安でした」
現在、シンガポール航空は1日1便だけだが、復便している。復便したとはいうものの、仕事量は激減したままだ。
「チェックイン業務以外の仕事がある時は午後も仕事をしますが、仕事が早く終わってしまう日もあります。同期や同僚の中には現職を継続する人もいれば新しい道に進む人もいるので、複雑な心境ではあります」
これまでの恵まれた環境に改めて気づく
仕事量が減ったのは、CAの坂井も同じだ。
「2020年の1月ごろまでは国内、国外問わずに飛んでおりました。国際線はアメリカ路線を担当していましたが、これが月に2、3本。そこに国内線の便が数本ついて、自宅に帰るのは月の半分ぐらいという生活でした」
会議もリモートで参加することが増えた(坂井さん)。(写真提供=ANA
ところが、4月5月は国際線がほとんど飛ばず、丸2カ月間勤務がなかった。
「とても驚きましたし、不安でした。いまは国際線が月に1回、国内線が月に数便あって、そこにリモートの会議が入ったり、教育プログラムが入ったりという感じですね」
FPによる「マネー・セミナー」なども、会社が用意してくれたという。
「いままでお金のことについてあまり考えたことがなかったので、給与面も含めて、本当に恵まれた環境の中で仕事をさせてもらっていたのだと改めて気づかされました。これからどんなキャリアを選ぶべきか悩んでいる同僚はたくさんいますが、私はいまのところ転身支援制度などを使うつもりはありません」
城戸と坂井は、動揺はしつつも基本的には現在の仕事を辞めるつもりはない。ボーナスが大きく減っている状況で、彼女たちはなぜ、ANAで働き続けることを希望しているのだろうか。
飛行機の扉が閉まる瞬間に立ち会うゲート責任者
城戸は昨年、コロナ禍がなければ、ステップアップできるはずだったという。外航の業務受託をしているグランドスタッフのスキルアップは、担当する外航によって若干の違いがあるものの、一般的には、チェックイン・到着・搭乗口業務→搭乗口の責任者→到着の業務の責任者→出発業務の責任者というルートをたどる。
城戸さんは、空いた時間でPCスキルの習得にも力を入れている。(写真提供=ANA
現在の城戸はビジネスとファーストクラスのチェックインや便のエディット(座席管理等の事前調整)を主にやっており、まだ1番目のステップにいる状態だ。もしもコロナがなければ、昨年中に搭乗口の責任者の資格を獲得できるはずだった。
「ゲート(搭乗口)の業務は5~7人で担当しますが、飛行機の扉が閉まる瞬間を見られるのはゲートの責任者1人だけなんです。私はどうしてもゲートの責任者を経験したいので、いまの職場に残る選択をしました」
PBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)の先端で飛行機のドアが閉まる瞬間に立ち会うことは、たしかに非日常的な、緊張感あふれる状況だろう。城戸はその光景がどうしても見たいというのだ。
接客業を極めたい
一方の坂井にも、明確な目標がある。CAのキャリアにも多くの段階があるが、現在の坂井は国際線のエコノミーのパーサーと国内線のチーフパーサーの両方の資格を持っている状態。まだまだ先がある。坂井が言う。
「客室乗務員は、最高のサービスを提供するための知識と経験を身に付ける必要があるため、日々勉強しています。私には接客業を極めたいという思いがあるので、ファーストクラスのパーサーの資格を取得したあとも、最高のサービスを追求し続けたいです。会社が多様な働き方を選択できるようにしてくれたので、例えば4月以降は8割勤務にして、2割は自分を磨くために使うといったことも考えています」
職務に強い憧れを持っていること、そして明確なスキルアップの階段の“途上”にいることが、ふたりの原動力になっている。
「とても厳しい状況ですが、精神状態を保つには、とくにかく動くことだと思います。動けば動いた分だけ、先が明るく照らされてきます。先輩の中に、4月以降はこんな働き方をしたいと話して下さる方がいるのですが、そういう方の話を聞くと、私もしっかり考え直そうと前向きな気持ちになれるのです」
この間、経営から社員への発信も増えている。城戸と坂井が異口同音にあげた“心に残る経営トップの言葉”は、「経営が続く限り、社員を守る」であった

 腎臓病のサインたんぱく尿 避けたい朝抜き、遅い夕食

下記の記事は日経グッディからの借用です

「朝食を抜く」あるいは「遅い時間に夕食をとる」という食習慣が、たんぱく尿の出現リスクを高める可能性があることが、日本人を対象とした研究で明らかになりました。
不健康な食習慣も腎臓の病気の原因になり得る?
職場や自治体が実施する健康診断では、ほぼ必ず尿検査が行われます。結果の中にある尿たんぱくが陽性(たんぱく尿)だと、腎臓の病気が疑われます。腎臓病は無症状である場合が多いため、たんぱく尿は腎臓の病気を見つけ出すための重要なサインになります。たんぱく尿が続けば、慢性腎臓病と診断される可能性が高まります。
慢性腎臓病は、進行して末期腎不全になると透析治療や腎移植が必要になるほか、総死亡(あらゆる原因による死亡)や心血管疾患(心筋梗塞脳卒中など)による死亡のリスク上昇にも関係することが分かっています。慢性腎臓病の主な原因は、糖尿病、高血圧、肥満ですが、それらの発生には不健康な食習慣が関係すると考えられます。例えば、日常的な朝食抜きや遅い夕食は、肥満リスクを高めることが示唆されています。
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これまでに行われた、食事と慢性腎臓病の関係を評価した研究の多くは、特定の栄養素(塩分など)の摂取を控える、栄養素の摂取バランスを変更する、といった介入が、慢性腎臓病の進行に及ぼす影響に注目していました。しかし近年、食事をとる時間や食べ方も慢性腎臓病の発症に影響するのではないかと考えられるようになりました。
食習慣は本人の努力次第で変えられることから、不健康な食習慣がどのような病気を引き起こすのかを明らかにすることは重要です。そこで金沢大学などの研究者たちは、慢性腎臓病の発症の手前で出現するたんぱく尿と不健康な食習慣の関係を調べることにしました。
腎機能に問題のない約2万7000人を3年超追跡
対象となったのは、石川県金沢市で、1998~2014年に年1回の健康診断を受けていた40歳以上の一般人です。
年1回の健康診断の際に、質問票を用いて、不健康な食習慣、飲酒習慣、喫煙習慣、降圧薬の使用、血糖降下薬の使用に関する情報を収集し、BMI[注1]とウエスト/ヒップ比[注2]を測定しました。不健康な食習慣に関する調査では、遅い夕食(週に3回以上、夕食が就寝前2時間以内になる)、夕食後の間食(週に3回以上)、朝食抜き(週に3回以上)について、「はい」「いいえ」から回答を選択し、早食いについては、同年代の人と比較して「早い」「同じ」「遅い」から選択するよう依頼しました。
健診の時点で腎機能が低下していた人や、尿たんぱくが1+(30mg/dLに相当)以上だった人、食習慣などの分析に必要な情報がそろっていなかった人などは除外し、健康診断後1年を超えて追跡できた2万6764人(平均年齢68歳、44%が男性、平均BMIは22.8、平均追跡期間3.4年)を分析対象にしました。
不健康な食習慣の中で最も多かったのは早食い(29%)で、続いて、遅い夕食(19%)、夕食後の間食(16%)、朝食抜き(9%)となりました。
[注1]BMI:体格指数=体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕 日本肥満学会の分類では25以上が肥満。
[注2]ウエスト/ヒップ比=ウエスト周囲径(cm)÷ヒップ周囲径(cm) 数値が大きいと生活習慣病のリスクの高い腹部肥満(内臓脂肪型肥満)と判断される。
まず、健康診断時のBMIおよびウエスト/ヒップ比と不健康な食習慣の関係を調べたところ、不健康な食習慣を実践していた人の方が、そうでない人に比べ、BMIもウエスト/ヒップ比も統計学的に有意に大きいことが明らかになりました。唯一の例外は、朝食を抜く習慣とBMIの関係で、朝食をしばしば抜く人としっかり食べる人のBMIには有意な差は見られませんでした。
また、追跡期間中のBMIの変化とウエスト/ヒップ比の変化には、不健康な食習慣の有無はほぼ影響していませんでした。
追跡期間中に、2844人(10.6%)にたんぱく尿が出現しました。発生率は1000人-年あたり32.7でした。4つの不健康な食習慣のうち、たんぱく尿出現リスクの上昇と関係していたのは、「遅い夕食」と「朝食抜き」でした。出現リスクはそれぞれ12%、15%上昇していました(表1)。「朝食抜き」と「遅い夕食」がある人のたんぱく尿出現リスクの上昇は、年齢、性別、BMIにかかわらず、広く認められました。
表1 不健康な食習慣とたんぱく尿出現リスクの関係
(Nutrients. 2020;12(9):2511. Published online 19 August 2020.)
この研究は、不健康な食習慣とたんぱく尿出現の因果関係を示したわけではありませんが、不健康な食習慣を改善すれば、腎臓をいたわることができる可能性を示すものといえます。
大西淳子

医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士

「自分はこんな所で働く人間じゃない」 “モンスター社員”に共通する“哀しい生態”とは

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平気で嘘をつく。被害者を装い、同僚を陥れる。見事な演技力で周囲を翻弄し、職場の人間関係をクラッシュさせる……。社会保険労務士の石川弘子氏のもとには、そうした“モンスター”としか例えようのない社員に関する相談が多数寄せられているという。
 ここでは同氏による著書『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)を引用し、理解に苦しむモンスター社員の“生態”を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
◇◇◇
モンスターの心理
 モンスター社員を見ていると、「どうしてこんな言動を取るのだろう?」と理解に苦しむ。モンスター社員と一口にいっても、タイプは様々だが、それぞれ問題となる言動にフォーカスして、その背景を理解することは、モンスター社員対策として有益だろう。モンスター社員が起こす色々な問題行動の根本にある心理はある程度共通している。
    *  歪んだ自己愛
    *  プライドの高さ
    *  自信の無さ
    *  コンプレックス
    *  嫉妬
    *  不満、怒り
    *  傷つきやすさ
    *  依存的
 これらの心理から、様々な問題行動が発生する。その表われ方は人によって異なる。例えば、同じ「自信の無さ」であっても、それが「自慢ばかりする」という形で表れる人もいれば、「パワハラ」という形で表れる人もいる。
 次に、私が見たモンスター社員の問題行動の裏にある心理を紐解いていこう。大抵のモンスター社員は、これらの問題行動をいくつか同時に起こすので、実際の心理はもっと複雑だろう。また、私自身は、心理学の専門家ではないので、これが正しい見解なのかは分からない。しかし、実際にモンスター社員に話を聞くなかで、「こういった要素があるのではないか」と私自身が感じた事を書いてみることにする。
どうして会社批判や嫌がらせをするのか?
 まず1つ目のポイントは、「その人が、仕事やプライベートも含めた人生に満足しているかどうか?」という点だ。「やりがいのある仕事をして、いい同僚に恵まれ、思いやりある友人や家族に囲まれている」という人で、実はモンスター社員だった、という例を私は見た事がない。モンスター社員の場合、仕事への不満や、人間関係でのトラブル、家族関係の不和などを抱えているケースが多い。過剰な要求や言いがかりなどを繰り返すモンスター社員の心の奥には、世の中への不満や怒り、自分の人生を肯定できない鬱積した思いなどが見えることがある。
「本来、自分はこんな所で働く人間じゃない」
 M山は、40代の男性で、前職は誰もが知る有名企業でエンジニアをしていた。しかし、激務から体調を崩し、仕事を辞めて田舎に帰ってきた。体調も良くなり、地元で再就職をしようと就職活動を始めたが、自分のキャリアを活かすような仕事はなく、ようやく介護関係の会社に就職が決まった。しかし、今までと全く違う仕事になかなか馴染むことができず、同僚の女性従業員から、何度も注意を受ける事があった。そのうち、「前の仕事は、給料がこんなに高かった」「前の職場では、管理職で部下が20名くらいいた」「前の職場は大手企業だったから、福利厚生がよかった。休暇も毎年2週間くらい取れた」「この会社はワンマン社長が好き勝手に経営している」と会社の批判をするようになっていった
 その話を耳にした社長が、
「40代での再就職は難しいだろうと思って拾ってやったのに、どういうつもりだ」
どうして部下や同僚をいじめるのか?
 特定の部下や同僚を目の敵にして虐めたり、馬鹿にしたりする人が、実は深いコンプレックスを抱えていることがある。派遣会社で派遣社員の管理を行うK田は、営業所長として営業所の管理スタッフ採用なども担当していた。K田は、大学卒業後、職を転々として派遣会社に入社したのだが、自分の学歴についてコンプレックスを抱いていた。
 スタッフの採用面接で、自分の出身大学より偏差値が上の学校を卒業した人に対して、
「いい大学出ているからって、仕事が出来るとは限らない」
「俺の知人でも○○大学を出ている奴がいるが、そいつは今だに役職がついていない」
 と、面接に全く関係のないことを言って応募者を戸惑わせていた。
 あるとき、本社からK田の部下としてやってきたA木が、有名私立大学を出ていると知ると、A木に対して、何かにつけて嫌みを言うようになっていった。
自分よりいい学歴の部下を徹底的に虐める
「あの大学を出ているのに、こんなことも出来ないのか? せっかくいい学校出ても意味がないな」
「○○大卒って聞いたから、期待していたのに、使えない」
「本社も学歴だけで採用するから、ろくな人材が採用できない」
 などと頻繁に言うので、A木は徐々にメンタル不全になっていった。本社からそのことで注意を受けたK田は、
「○○大卒のお坊ちゃんは、ちょっとした事ですぐに本社に泣きつく。やっぱりいい大学出ている奴は駄目だな」
 と、A木に聞こえるように嫌みを言うのだった。A木はついに出勤できなくなり、異動を願い出て、別の営業所へ移っていった。
 K田は、その後も自分よりいい学歴の部下が来ると、徹底的に虐め、次々に部下を潰していった。この事態を重く見た本社の人事がK田を降格し、賃金を下げると、K田は案の定、会社に対して噛みつき、労働局の紛争調整委員会にあっせん(*)を申請した。結局、最終的に給与の6カ月分を支払う事で、K田は退職していった。
コンプレックスが肥大して…
 どんな人でも、多かれ少なかれ自分に対するコンプレックスを抱えている。しかし、それが極端に大きくなると、コンプレックスから自分を守るために、周囲の人間を攻撃する人がいる。K田の場合、自分の学歴について、周囲からバカにされないように、逆にその部分を攻撃する事によってバランスを保っていたのだろう。健全な人間関係を築くために、自分を肯定するというのはとても重要な事だ。しかし、K田の場合、自分の学歴を受け入れることができず、心の底では自分を否定していたのだろう。その思いが、部下へのいじめという形で噴出したのだ。
どうして自慢するのか?
 どうでもいいような自慢話を、話の脈絡に関係なくしてきたり、自分に注目があつまるよう、派手な言動で周囲の興味をひく人の根本にあるのは、自分への自信のなさだ。自己評価が低く、傷つきやすいので、「自分を良く見せたい」「周囲にすごい人だと思われたい」「本当は、こんな自分になりたい」という気持ちが、自慢や派手な言動につながる。時に、内容が現実味を帯びず、周囲から「うそつき」とされてしまうこともある。
 また、注目を浴びる事が大好きで、自己愛の強い人も自慢をする傾向がある。女性の場合、露出度の高い服を着たり、派手なメイクなどで異性の関心を引こうとする事もある。こういった人も、根本には自信のなさがあるのだろう。注目を浴びる事で、自分の心のバランスを取っているように思う。
男性従業員を次々と誘惑し…
 私の知人が勤める職場に、まさにこのタイプの女性モンスターがいた。そのモンスター社員は30歳前後の独身女性で、地方の短大を出て地元企業で数年働き、上京して都内のWEB制作会社で働いていた。口を開けば、自慢話ばかりで、
「自分の家は名家だ。父親は会社を経営する地元の名士だ」
「学生時代から十分な小遣いをもらっていたので、アルバイトなどした事がない」
「実家の庭の池には、1匹数千万円の錦鯉がいる」
「自分の出た短大は、地元では有名なお嬢様短大だ」
 といった話を繰り返し語る。自慢だけなら聞き流せば害も無いが、露出度の高い服で、男性従業員に迫り、次々と誘惑する。それも、同時期に何名もの同僚と関係を持つため、職場内の空気はギクシャクしていった。そのうち、「体調が悪い」「怪我をした」などと、会社を頻繁に休むようになった。知人が心配して尋ねると、
「彼氏と連絡が取れなくて、不安で食事が取れない」
「彼氏に殴られて、顔に痣ができたので、外に出られない」
 などと訴えた。彼女はその知人が同情して心配してくれるだろうと思ったのだろうが、知人は呆れてしまい、
「プライベートに口を出すつもりはないが、社会人として仕事にプライベートを持ち込んだり、職場の何人もの男性と関係を持つのはどうなのか?」
 と注意した。すると、逆上した彼女は、この知人を無視したり、仕事上の連絡をわざとしないなどの嫌がらせをしたりするようになった。当然仕事上も混乱が起こり、クライアントに迷惑をかけてしまうような事態に陥った。
 このような場合、本来は上司が厳しく注意するべきなのだろうが、なんと上司も彼女と関係を持った事があったらしく、結局何もお咎めがなかった。職場は散々引っかき回され、何人もの退職者を出し、ついに大口のクライアントも失った。
自己評価の低さがメンタルに与える影響
 この女性のように、自分が注目を浴びるために、自慢をしたり、自分がいかに不幸であるかを大げさに語るモンスター社員がいる。自慢話に関しては、自分自身の事ではなく、家柄や両親の職業、友人関係などを自慢する人が多いようだ。おそらく自分自身を認めていないので、自分の中には自慢できるものがないと無意識に思っているのだろう。自己評価が低いため、メンタル的に不安定なのだ。メンタルが不安定なため、一時の安らぎや親密さを求めて、次々と異性と関係を持つ場合もある。また、常に注目を浴びたいという気持ちが、派手な言動や自慢、虚言という形で表れるのだ。
 と叱責した。すると、M山は、ますます会社に対して反抗的になり、待遇面で不満を持っていた従業員などを味方に引き入れて、会社に対して嫌がらせをおこなうようになった。あるときは、管理者の机にゴミをぶちまけたり、あるときは、従業員全員のタイムカードをシュレッダーにかけたりなど、常軌を逸した行動にまでエスカレートしていった。たまりかねた会社が、M山を解雇すると、今度は弁護士を雇って、解雇無効の争いを起こすという始末だ。最終的には会社がいくらかM山に支払って何とか退職してもらった。
 M山は、大手企業でエンジニアをして管理職だったというくらいなので、おそらく優秀な人だったのだろう。ところが病気で自分の人生が大きく変わってしまい、鬱積した気持ちを抱えていったのだと推測する。
「本来、自分はこんな所で働く人間じゃない」
「もっと自分の能力は高いのだ」
 というプライドが、不満や怒りへと変わっていったではないか。その思いが、会社への批判や嫌がらせといったゆがんだ形で噴出した。会社批判、過剰な要求、嫌がらせ、非常識な言動の裏には、こういった感情が隠れている事がある。

息子に「パパ」の話をしたこと。シングルマザーのお話

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未婚でシングルマザーになって4年、ずっとずっと考えて準備して頭のなかで練習していた話を、こないだ息子にしました。息子のパパの話。
最近こころのエネルギーがSNSよりもっと料理とか生活とかを頑張りたい方向に傾いてるから、この問題も初めさらっとTwitterで書きかけたんだけど、
noteを始めてから、ここにまでわざわざ見に来てくれるひとのあたたかさを本当にいつも実感しているので、私の事情や日ごろの考え方をすこしでも前提としてわかって下さるような方に向けてちゃんと残したいなと思いました。
とくに、私は何かの事情や思いがあってパートナーを持たずに子供と暮らす方にいろいろ発信したいという目的もあるので。
本当に大切な話なので今回はまじめに書きます。

息子がおなかのなかにいたころ、
「なんでこの家にはパパがいないの?」がいつか来る日のための練習
という短歌を作りました。これは本当に私がずっと頭の中で練習していたことで、こういう説明をしよう、こういうふうに向き合おう、こういう時はこういうふうに…と本当にいつも考えていたんだけど、
彼がうまれて体も心もどんどん成長していく中で、「あっこれじゃ遅いんだ」と最近気付きました。
「来てから」じゃダメだ。
先に伝えて、彼にも準備を、段階を踏んでもらう必要があるんだ。

うまれてからずっとじぃじ、ばーちゃん、母ちゃんと暮らしている息子にとって、『家族』という形はこれが当たり前になっていて、
お友達に「パパ」がいるということも当たり前の日常で、
だけどそのふたつのピースが
「自分にもパパがいるはず???」という風にまだ繋がっていなかったんだけど、
そこが繋がって疑問に思うより先に、もうちゃんといろいろわかっているからこそ話しておかなければと思いました。
最近「母ちゃんのママはばーちゃん、ばーちゃんのママは大ばぁば」という事実を知って「エーーーーッ!!!」と驚愕していた息子はその流れで母から「母ちゃんのパパはじぃじ!」と教えてもらい、クイズ感覚で
「のパパは誰でしょう〜!大ばぁばでした!じぃじでした!」と答え合わせ風に言っていたので、
その場では「じぃじと大ばぁばはのパパじゃないんだよ、のパパは背がうんと高かったよ」と伝えて、
「イケメン?」「めっちゃイケメン」「そっか〜!!!」で話が終わったんだけど、
その日一緒に眠る前、電気を消して一緒のふとんに入って、あぁ、今日が『その時』なんだと腑に落ちる感覚があり、
「あのさ〜、母ちゃんに大事なお話したいんだけどいいかな?」と切り出しました。
「いいよ〜!何、うんちの話とか!?」

「うんちの話じゃないよ笑
 あのさ、母ちゃんのママは誰だっけ?」

「母ちゃんのママは…ばーちゃん!」

「ピンポーン!じゃあ母ちゃんのパパは?」

「じぃじ!」

「ピンポーン!じゃあさ、のママは?」

「母ちゃん!!!」

「大正解!それでさ、のパパのお話おぼえてる?」

「おぼえてる!背が高くてめちゃめちゃのイケメン!」

「大正解〜!
あのね、にはちゃんとイケメンのパパがいるんだけどさ、がお腹の中いる時にね、母ちゃんとのパパはよくお話合いをして、一緒には暮らさないことになったんだ」

「なんでー?」

「いろんなことの考え方が違くてね、母ちゃんお腹の中にいたが毎日笑って暮らせることを一番大事にしたかったの」

「うん」
いつもどんな話でも隙あらばうんちおしりおなら方向に持っていって茶化す息子が、一生懸命聞いてくれているのが伝わってきて、私も一生懸命いまの家族の形を選んだ説明をしました。
結婚しなかったのには私たちなりの理由があって、本当に人生で一番悩んで出した結論だし、むやみやたらと人に話すことではないのでnoteには書きません。ただ息子にパパに関するマイナスな話を私からだけ伝えることはしないと決めてるので、悪く言うことは決してしない。
「〜〜〜ていうことがあってね、
 母ちゃんとのパパは一緒に暮らさないことになったの。でも保育園のお友達はさ、おうちにママとパパがいる子が多いでしょ。みんなでパパの絵を描いたり、パパの話をすることもこれからあると思うのね。のパパはー?て聞かれたり。
それでさ、これが大事なお話なんだけど、がかなしかったり、さびしかったりする時がこれから先くると思うの。なんで?って思うことがあると思うんだ。そういう時はおうちに帰ってきたら、母ちゃんにおしえてほしいんだ。
母ちゃん絶対のお話聞くから、いつも一緒に考えよう。」

「わかった!なんでかなって思うのとき母ちゃんにお話する」

「ありがとう、あのね、はなんっにも悪くないの、全部母ちゃんが決めたから悪いの母ちゃんなんだけど…」
その時、ずっと私の話をまじめに聞いていた息子がはじめて私の言葉を遮って
「なんで?なんで母ちゃん悪いの?母ちゃん悪くないよ」

まだ全部を理解して言っているわけじゃないのはわかってるんだけど、
泣きました。本当にびっくりして泣いてしまった。普段あんなにすぐうんちおならおしり関連の茶々を入れてくる子が(その話2回目ですよ)、ずっと真剣な顔でお話を聞いてくれて、はじめて遮るのがここってなんて優しい子なのか。
私が泣いたのを見て息子も「まーた母ちゃん泣いた!?もー!の母ちゃんすーぐ泣くよ!ほれ!!!」と言って自分のパジャマのお腹をまくりあげて私の顔をゴシゴシ拭き、
その次に言ってくれた言葉が

「みんながまもる!母ちゃんもじぃじもばーちゃんも!」
ヒー
だめだ落ち着いて考えて文章にしようと思ったけど泣いてしまうね。たぶん思い出すたび一生泣くと思う。
そのあとふざけた感じで「だって強いもんね!ムキムキだもん!」と付け足して笑ってくれたので、

「ありがとう、でもさもうお兄さんだけどまだちょっとちびっこじゃん、大人になるまで母ちゃんが絶対に守るからね、はもう一番がんばってるんだから、これ以上なんも無理することないのよ、母ちゃんもじぃじもばーちゃんもみんなが大事、一番の味方だからね、みんなでを守るよ」

と伝えて今回の話は終わりました。
(正確には「守るって言ってもどう守ってくれるのか」聞かれ、母ちゃんはスパイダーマン母ちゃんに、じぃじは仮面ライダー1号じぃじに、ばーちゃんは包丁を持ってを守るということを命じられました。ばーちゃん物騒だな!)
寝る前、
今日母ちゃんの話聞いてくれてありがとうねと言ったらどういたしまして!と言われ、
「…母ちゃん、おてて繋いで」

「はいよ、母ちゃんの大事の大事の」

「母ちゃん、のパパってさ……鼻の穴あった?鼻の穴」

「鼻の穴!!???あった、いやあったよ、結構ある人が多いと思うよ、なんで鼻の穴!?」

「そっかぁ…鼻の穴あったか…!」
その言葉を最後に息子はぴー…すぴー…と寝ました。

この日から、もしお友達にこう聞かれたらこう答えよう、父の日にパパの絵を描く(うちの園は毎年あります)ときはじぃじを描こう、
と息子と一緒に「練習」を進めています。
まだまだ入口に立ったばかり。
私の選択したことはこういうことなんだ、と毎日一生懸命考え、私自身の勝手な選択に勝手に巻き込み、勝手にこの世に呼んだのにも関わらず毎日家族みんなを文字通り光のように照らしてくれる息子のために、とりあえず何か「今この瞬間から」頑張れることを始めようと決めました。(ここ最近料理がんばり出したのはとりあえず最初の一個!と思って、これが理由です)
パパの話に関してはとにかく「聞いちゃいけないかも」「これ聞くと変な空気になっちゃう」と思わせてしまうのを一番避けたいので、
聞かれたことはすべて(その時々の年齢に沿って伝えて良いと私が思う範囲の話を、伝わりやすい言葉で)答えるようにしています。
今のところは鼻の穴があるかどうかを3回聞かれたのと、ヒゲもあるかどうか気にしていました。鼻の穴はあったよ。ヒゲはそのときはなかったよ。
これから先もがんばります。気づかないうちにこんな優しい子に、こんな大きな子にいつのまにか成長していたんだな。
以上、息子に大事な話をした話でした。

日本人のがん1位「大腸がん」を予防する4つの生活習慣

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大腸がんは増え続けている
現在、日本人が最も多くかかっているがんをご存知でしょうか? 答えは、「大腸がん」です。がん検診が推奨され、前がん段階での早期発見が可能になっているにもかかわらず、日本人の「大腸がん」の罹患率は、下のグラフのように右肩上がりで増え続けています。
※編集部註:本文に合わせ、図表1を追加しました。(2月13日12時46分追記)
大腸がんは、生活習慣と深くかかわっている病気です。腸は私たちが食べたり飲んだりした物すべての残渣ざんさ(残りカス)が便になる過程で、最後に必ず通過していく通り道ですから、食生活の影響を特に受けやすい臓器なのです。暴飲暴食を続けていると、大腸も悲鳴を上げますが、腸の最も内側の粘膜には神経がないため、炎症が起きていても痛みを感じにくく、ひどくなるまではなかなか気づきません。
これこそが、「腸がむくんでいる」状態なのです。
炎症初期は「お腹に違和感がある」程度の症状
大腸がむくんでしまうことは、消化器の診療を専門にしている医師であれば誰でも知っていることですが、一般の人たちにはほとんど知られていないようです。筆者も、お腹の不調を訴える患者さんの腸の内部を大腸内視鏡(肛門から挿入してカメラで内部を調べる医療機器)で観察して、「腸の中が大分むくんでいますね。お酒を飲み過ぎたり、脂っこいものを食べたりしていませんか」と問いかけると、患者さんはびっくりするらしく、「腸もむくむことがあるんですか!?」と聞き返されます。
内視鏡で見た健康な大腸の粘膜は、腸管のヒダがしっかり立ち上がり、毛細血管もはっきり見えます。対して、むくんでいる大腸の粘膜は、慢性的な炎症によって、細胞に水分が誘導されて腫れぼったくなり、表面のヒダや血流がはっきり見えません。
炎症が内側の粘膜層に留まっている段階なら、強い痛みはなく、「お腹に違和感がある」「押すと痛いところがある」「酒を飲むと下痢が続く」などの症状が見られる程度です。しかし、炎症が粘膜より外側の層や、腸のすぐ外にある腹膜など神経のある組織にまで及べば、強い痛みを感じるようになります。
腸がむくむメカニズムをさらにわかりやすくするため、イラスト化してみました。
イラスト=『大腸がんで死にたくなければ腸のむくみをとりなさい!』
きれいな腸粘膜
日頃から食事に気をつけていると、上の図のように、腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランスが良好に保たれて、粘膜の表面もきれいです。血液中の免疫細胞は、何ごとも起こらないときも見張ってくれています。
大腸がんの重大なリスク
ところが、毎日お酒を飲み、油物を好んで食べるような不摂生を続けていると、腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増えてしまいます。そして、腸の粘膜に炎症が起きると、免疫細胞は戦闘態勢になって炎症細胞の数が増え、粘膜の細胞に水分が誘導されて、右図のように膨らんで見えます。これが「腸のむくみ」の正体です。
むくんでいる腸粘膜
さらに、腸がむくんだ状態が続くと、大腸の壁に「憩室(けいしつ)」という凹みができてそこから出血したり、エノキのような「大腸ポリープ」ができたりすることもあります。大腸がんは、この大腸ポリープの一部が悪性化したものです。「腸のむくみ」は大腸がんの重大なリスクとなるのです。
腸のむくみの原因は、不摂生な生活──具体的には、①大量飲酒②牛・豚肉やバター、ラード、乳脂肪を含む牛乳や乳製品などの動物性脂肪(オメガ6系脂肪酸)の多い食事③水分不足による慢性便秘など腸内環境の悪化④運動不足などです。
①と②は、大腸がんの発症リスク要因とも共通しています。疫学的な調査研究からも、「1日に30グラムを超える動物性脂肪を摂っていると、腸の炎症を引き起こしやすい」ことや「ハム、ソーセージなど加工肉を食べることは大腸がんの発症につながる」ことなどが報告されています。つまり、「腸のむくみ」を予防する生活習慣は、そのまま大腸がんを予防することにつながるのです。
むくみを予防する4つの習慣
では、どうすれば「腸のむくみ」を予防できるのか?
ここでは、その対策として、4つの習慣を挙げたいと思います。
まず大量のアルコールによる腸のダメージを最小限に抑えるために、患者さんには週2日以上の「完全休腸日」を提案しています。一般的に、お酒好きの人がアルコールを抜く日を設けるときに「今日は休肝日だ」といいますが、そもそも、節酒したアルコールを吸収、分解、解毒するために働いているのは肝臓だけではないのです。
「食べものは胃腸、お酒は肝臓」と、消化の役割分担があるように誤解されていますが、消化器官はすべてつながっており、常に関わりあって働いているので、肝臓の負担になるものは他の消化器官にも負担をかけています。たとえば、膵臓もアルコール摂取の影響を強く受ける臓器であり、「急性膵炎」の約半数、「慢性膵炎」では約8割は、お酒の飲み過ぎによるものです。
少なくとも週に2日は、完全にお酒を抜いて、休肝日ならぬ「休腸日」を作ってあげてください。長く働いてもらうためには、内臓にも働き方改革が必要なのです。
水溶性の食物繊維や水分摂取も大切
次に、腸内環境を整えるための食事です。大腸がんは、食生活の欧米化に伴って増えてきた病気です。「腸のむくみ」の原因になりやすい動物性脂肪を控えるとともに、発酵食品と食物繊維を意識して摂るようにしましょう。納豆、味噌、ぬか漬け、キムチなどの発酵食品には、腸内の腐敗物質の生成を抑える乳酸菌がたくさん含まれています。そして、食物繊維は、腸内の善玉菌のエサになるだけでなく、消化されないまま大腸まで届いて便のカサを増すという効果もあります。
特に、便通を整えるためには、昆布やワカメなどの海藻類や大豆、大麦、イモ類、キノコ類などに多く含まれる「水溶性食物繊維」を積極的に摂るようにしましょう。
さらに、便秘を予防して腸に負担をかけないためには、十分な水分を摂取することが重要です。小腸で栄養分が吸収されたあとの食べものの残渣は、大腸のトンネルの中を運ばれる過程で水分が少しずつ吸収され、便の形になっていきます。水分の摂取量が不足していると、便の塊が硬くなって排便しにくくなるだけでなく、大腸の内壁を傷つけて炎症を引き起こします。
ふつうの体格の成人であれば、「1日2リットルの水を飲む」ことを目安にしてください。水は、喉が渇いていなくてもしっかり飲むものだと考えましょう。
運動不足も腸の健康に影響する
最後に運動です。スマホなどの普及と交通機関の発達、エレベーターやエスカレーターの普及などに伴って、私たち現代人は日常の活動量が激減しています。それに伴って、姿勢が崩れ、大腸などの内臓を支える骨盤底筋群をはじめとする下半身の筋肉が衰えて、内臓を本来の正しい位置にキープすることが難しくなっています。
大久保政雄『大腸がんで死にたくなければ腸のむくみをとりなさい!』(すばる舎
健康状態に問題のない人であれば、まず1日30分程度のウォーキングを日課にすることから始めてみてください。背筋を伸ばして、大股で腕を大きく振って歩きましょう。腕を振ることによって、お腹の上下運動にひねり運動が加わり、腸の動きがよくなります。膝や腰が痛い人は、プールの中で行う「水中ウォーキング」も効果的でしょう。
日本人の二人に一人が、がんにかかる時代になりました。そのトップである「大腸がん」の重大リスクには、大腸の粘膜に軽い炎症が続くことによって起きる「腸のむくみ」があるのです。不摂生を避けて腸内環境を整えることができれば、むくみは必ず治まります。そして、便通の異常やおなかの違和感、軽い痛みなどを感じたら、軽視せずに消化器内科専門医を受診することをお奨めします。