統合失調症 幻覚や妄想などの「急性期」でも通院治療のケースも〈週刊朝日〉

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およそ100人に1人がかかり、精神科の病気の中でも頻度が高い「統合失調症」。幻覚や妄想などの症状が強く現れる急性期は、薬物療法に重点をおいた治療になる。急性期を乗り越え、次のステップにつなげることが大切だ。 【統合失調症のデータはこちら】
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 統合失調症は長期にわたって治療に取り組む必要があるが、十分な回復が期待できる。治療の両輪となるのが「薬物療法」と、カウンセリングやリハビリテーションなどの「心理社会的療法」だ。症状や経過に合わせ、両者の比重を変えながら組み合わせていく。  幻覚や妄想などの激しい陽性症状が現れる「急性期」は、薬物療法に重点をおいた治療がおこなわれる。京都大学病院精神科神経科教授の村井俊哉医師はこう話す。 「患者さんは幻覚も妄想もすべて現実に起きていることだと思い込み、これまでに体験したことのないような恐怖を感じています。幻聴に『死ね』と命じられて、自殺を図ろうとしてしまうことさえあります。幻覚や妄想は、薬で抑えることが可能です。つらく危険な状態から早く脱するために、できるだけ早く治療を始める必要があります」  主に使われるのは「抗精神病薬」だ。脳の中で情報を伝達している神経伝達物質の一つ、ドパミンの活動を調節することで、幻覚や妄想を改善する。近年は陽性症状だけでなく陰性症状も改善するなど、さまざまなタイプの抗精神病薬が使えるようになった。  抗精神病薬は効果が高く、幻覚や妄想を抑えるには欠かせない薬だが、からだの震えや筋肉のこわばり、口のもつれ、からだがそわそわして落ち着かないといった「錐体外路症状」と呼ばれる副作用が出ることもある。  同じ薬でも効き方や副作用の出方は人によってさまざまなので、多くの薬の中から一人ひとりの状態に合った種類と量を細かく調整していく。 「つまり錐体多くの場合、薬を服用後1~2週間ほどで幻覚や妄想は弱まり、次第に落ち着きを取り戻していくという。 また、治療を成功に導くには「休養」も欠かせないと村井医師は言う。 「患者さんは幻覚や妄想で疲弊し、音や光などの刺激に敏感になって十分な睡眠を取れていません。病気が重い時期に不眠や過労でさらに無理がかかれば、症状の悪化を招いて治りにくくなってしまいます。『今は休養の時期』と割り切り、必要に応じて睡眠薬抗不安薬なども使いながら、静かな環境でゆっくり休むことが大切です」 ■入院か外来か 選択も重要になる  症状が強く現れる急性期はとくに、入院か外来か「治療の場」の選択も重要だ。村井医師は言う。 「急性期だからといって必ずしも入院が必要となるわけではありません。近年は薬物療法の進歩などで症状をコントロールしやすくなり、以前に比べると通院で治療するケースは増えています」  一方、入院は仕事や家事などふだんの生活から離れることになるが、そのぶんしっかり休養をとることができ、治療のプラスになる場合もある。医療者側も、病状をつぶさに把握でき、薬の種類や量を調整しやすい。  とくに「症状が重く、日常生活が維持できない」「服薬や休養など治療に必要な最低限の約束を守ることが難しい」「本人が入院を希望している」「支える家族がそばにいない」という場合は、入院を選択したほうが、安心して療養に専念できる。
 難しいのは、入院が必要なのに本人の同意が得られないケースだ。統合失調症では病気が始まってしばらくは本人に病気だという自覚がほとんどなく、幻覚や妄想が出ていても治療に応じないことが多い。しかたなく家族が何とか病院へ連れていき、医師の判断で閉鎖病棟保護室に入院になることもある。精神科の入院は、閉じ込められる、自由を奪われるというイメージが強く、それも必要な治療にたどり着けない一因となっている。村井医師はこう説明する。
外路症状のような副作用を起こさず、一方で幻覚や妄想といった症状を抑えることができるような、ちょうどよい薬の量を見極めることになります」(村井医師)
多くの場合、薬を服用後1~2週間ほどで幻覚や妄想は弱まり、次第に落ち着きを取り戻していくという。  また、治療を成功に導くには「休養」も欠かせないと村井医師は言う。 「患者さんは幻覚や妄想で疲弊し、音や光などの刺激に敏感になって十分な睡眠を取れていません。病気が重い時期に不眠や過労でさらに無理がかかれば、症状の悪化を招いて治りにくくなってしまいます。『今は休養の時期』と割り切り、必要に応じて睡眠薬抗不安薬なども使いながら、静かな環境でゆっくり休むことが大切です」 ■入院か外来か 選択も重要になる  症状が強く現れる急性期はとくに、入院か外来か「治療の場」の選択も重要だ。村井医師は言う。 「急性期だからといって必ずしも入院が必要となるわけではありません。近年は薬物療法の進歩などで症状をコントロールしやすくなり、以前に比べると通院で治療するケースは増えています」  一方、入院は仕事や家事などふだんの生活から離れることになるが、そのぶんしっかり休養をとることができ、治療のプラスになる場合もある。医療者側も、病状をつぶさに把握でき、薬の種類や量を調整しやすい。  とくに「症状が重く、日常生活が維持できない」「服薬や休養など治療に必要な最低限の約束を守ることが難しい」「本人が入院を希望している」「支える家族がそばにいない」という場合は、入院を選択したほうが、安心して療養に専念できる。  難しいのは、入院が必要なのに本人の同意が得られないケースだ。統合失調症では病気が始まってしばらくは本人に病気だという自覚がほとんどなく、幻覚や妄想が出ていても治療に応じないことが多い。しかたなく家族が何とか病院へ連れていき、医師の判断で閉鎖病棟保護室に入院になることもある。精神科の入院は、閉じ込められる、自由を奪われるというイメージが強く、それも必要な治療にたどり着けない一因となっている。村井医師はこう説明する。

閉鎖病棟は病状が不安定なときなどに入院する病棟で、出入りが制限されています。保護室は自殺のリスクがあるなど、いっそうの安全確保が必要な人のための病室で、出入り制限だけでなくきめ細かく観察できるような態勢がとられています。一時的に患者さんを危険から守るための場所で、治療で陽性症状が落ち着けば、一般病棟に移ることができます」 ■急性期の終わりが退院の目安  急性期の期間は数週から数カ月。適切な治療を受けることで幻覚や妄想といった激しい陽性症状はおさまり、入院治療をしている人は、急性期の終わりが退院の目安になる。村井医師は言う。 「その後の回復の経過には個人差がありますが、このころになると、薬がどのくらい効いているか判断できるようになり、順調に職場復帰できそうだとか、少し長引きそうといったある程度の見通しがつくようになります。病気になったとたんにあわてて大学や会社を辞めてしまいがちですが、病気が始まったときは、まだ進路を変えるような判断をする段階ではありません」  また若い世代がかかりやすい病気だけに、「この先、どんどん悪くなっていくのでは」と心配する人も少なくない。 「統合失調症は進行性の病気ではありません。残念ながら徐々に悪くなってしまう方がいらっしゃるのは事実ですが、最も症状が重いのは最初の数年間で、その後は完治とは言えないまでも良くなっていくことが多いのです。また患者さん自身も、病気と上手に付き合っていけるようになります。治すべきときはしっかり薬を飲み、必要に応じて入院もして急性期を乗り越え、次のステップにつなげることが大事です」(同)