少子高齢化のリアル 20年後の人口が見せる年金と税金

下記の記事は日経ブックコラムからの借用(コピー)です

2040年の日本は老人ばかり
2040年に果たして、年金はいくらくらいもらえるのか、税金はどのくらい払うのか、医療費はどうなるのか。現状をきちんと把握しながら、未来に私たちが何をすべきか考えていくのは、とても大切だ。そもそも、その背景には一体なにがあるのかを知ろう。
日本の財政は破綻すると誰もが聞いたことがあるだろう。
そのことについて心配している人をよく見かけるが、財政破綻しようがしまいが、これからの日本がますます貧しくなるのは間違いないことを、まず認識しなければならない。
「ますます」と書いたのは、2020年の今、日本はすでに貧しい。こう聞くと違和感を抱くかもしれない。私たちの生活は5年前、10年前と大きく変わっていない点も少なくないからだ。
たとえばあなたが30代ならば、昼に800円のラーメンを食べ、夕飯に500円のコンビニ弁当を食べることが10年前もあったはずだ。変わらない光景がそこにはあるわけだから、貧しくなっていないではないかと思う人もいるだろう。
だが、これは、裏返せば、10年前から物価がほとんど上がっていないということでもある。コロナ禍の前までは海外から観光客が押し寄せていたが、あれは日本の観光キャンペーンがうまいわけでも、日本の自然の風光明媚さが外国人の心をつかんでいるわけでもない。
単純に、自国でモノを買うより日本で買う方が圧倒的に安い国が増え、その国の人たちが押し寄せているのだ。
私たちが変わらない間に、他の国々は所得が増え、リッチになり、自国での物価が上昇し、日本に行ってでも買い物した方が得なのだ。つまり、日本は世界でみると、「安い国」になったということである。
こうした状況は今後も変わらない。
日本は経済成長がこれからほとんど見込めない。GDPの成長率も2030年以降はマイナス成長やほぼゼロとの予測が支配的だ。
これからの日本は食べるものにも困るような悲劇的な状態にはならないだろうが、世界を見渡したときに相対的にどんどん貧しくなる。これは嘆いても解決しない。労働人口は減り、いくら生産現場の自動化やオフィス業務でAIの導入を進めたところで、国全体の生産性の向上や経済成長には限界がある。
当然ながら、成長が望めない国の財政や社会保障の見通しは明るくない。正直、これを書きながらも暗い未来しか想像できず、恐怖を感じずにはいられないが目を背けることはできない。
まず、財政の状況から見てみよう。
財政の健全度を示すといわれるのが、政府の債務残高だ。これは、対GDP比のことで、ゼロに近いほど健全だ。これが2018年時点で237%。IMF国際通貨基金)の調査国188カ国・地域中188位であった。最下位だ。
なぜ、こうした事態になっているのか。日本の財政を家計に例えると、毎年、収入より支出が多い状態が続いているからだ。慢性的な借金体質なのである。
税収だけでは予算を組めない。消費税や所得税法人税などの税収では歳出の約6割しか賄うことができていない。そのため、残りは債券(国が発行するので国債。資金を借り入れたときに発行される借用証書)を発行し、それを中央銀行である日銀が実質ほとんど買い上げている。
この状態を解決する方法は、理論的にはとても単純だ。使うお金を減らせばいいのだ。
家計と同じで、入り口が少なければ、出口を減らせば、借金する必要がないのだが、現実的には難しい。
いちばんの理由は、高齢化だ。いくら頑張ろうと、当然、高齢者が増えることは避けられず、たとえば、医療・介護費用などの増大は不可避だ。
医療、介護や年金などの社会保障費はどのくらいまで膨らむだろうか。これには、いろいろな試算があるが、政府は2019年度に124兆円だった社会保障関係の総支出額は2040年度には190兆円に拡大すると予測している。その中でも、医療介護給付費は現行の2倍近い90兆円を超える水準まで跳ね上がる可能性も指摘されている。
もちろん、若年層の人口が増えていれば支えられる。しかし、もう無理だ。ご存じのように人口減少社会に突入している。
支える若者が減り、老人が増えるのだから厳しくなるのは明らかだ。65歳以上を支える現役世代は1950年には12.1人だったが、2040年には1.5人になる。高齢者ひとりを、かつては胴上げできたのが、肩車しかできなくなるようなイメージだ。
老人が増え、それを支える若者が減る
少子高齢化が進むと大変なことになる」とは、みんな知っているだろう。しかし、リアルにどのようなことが起こるのか、ここでしっかり押さえておこう。
少子高齢化が進んだ2040年の世界は想像するだけでも恐ろしい。団塊世代が90歳、団塊ジュニア世代が65歳になる。そして、団塊ジュニアの4割が集中するのが首都圏だ。膨大な数の都民が高齢化を迎える。見渡す限り老人だ。過疎地ではすでに現実になっている老老介護が現実のものになる。東京都の年少人口(15歳未満)が占める割合は2019年は11%だったが、2040年以降には10%を割り込む。子育て支援に力を入れようとしても、対象となる子どもがいなくなるのに歯止めがかからない皮肉な状態だ。
あたりまえだが、人口は最も読みやすい。2040年の労働人口は確定している。
10年後に出生率が上がったところで、もう食い止められない。現状の延長線上にある未来はこうした世界だ。
国の財源は、私たちの社会保険料からまかなうしかない
働く人の数が増えないとなれば、所得税法人税が自然に増えることも期待しづらい。そんな中、財政を考えるなら、現実的には歳入を増やすしかない。しかし、財源の確保は困難だ。
歳入を増やすと聞いて考えられるのは、まず消費増税だろうか。2019年10月に8%から10%に引き上げられた。安倍晋三前首相は今後10年程度は再引き上げしない方針を示していたが、有言実行となれば財政状況はさらに悪化するだろう。
有識者からは、消費増税を先延ばしにすれば2030年以降に消費税率を20%以上に倍増せざるをえないとの指摘もある。国際機関のまなざしも厳しく、OECD経済協力開発機構)は最大26%に、IMFは段階的に15%まで引き上げることを日本に提唱している。
消費増税に踏み切らなければ、社会保険料を引き上げるしかない。そもそも社会保険料はすでに上昇の一途だ。給与明細を見てみよう。賃金上昇を上回るペースで社会保険料の負担が上昇している。
10年前に比べて社会保険料の負担率は、ひとりあたり26%増えているが、賃金は3%しか伸びていない。これでは、勤労意欲を失う人も多いだろう。先進国の中で、ただでさえ低い生産性がさらに下がる可能性がある。負の循環に陥れば経済成長は落ち込み、さらに国の財政は厳しくなる。
2040年はお先真っ暗だと思われた方がほとんどだろう。
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ここでは、本書のうちの一部分だけを紹介した。書籍では、来るべき未来のために、みなさんの懐を大きく痛めずに、私たち個人は何をすべきなのか、そして国の歳入がどうすれば増えるのかも考えている。興味が沸いたら、ぜひご一読いただきたい。
日経BP 中野亜海)
成毛真
1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト社長。