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加速するコロナワクチン接種、万一副反応・健康被害が起きたら補償体制は?

下記はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です

ようやく加速してきた新型コロナウイルスのワクチン接種。だが、ちまたでは副反応への危惧を訴える声もいまだ強い。それでは、ワクチン接種により健康被害が出た場合の補償制度はどうなっているのだろうか。連載「知らないと損する!医療費の裏ワザと落とし穴」の第223回では、予防接種制度の仕組みと補償制度、そしてコロナワクチンへの対応について取り上げる。(フリーライター 早川幸子)
いよいよ一般接種が始まるコロナワクチン
万一の補償体制についても知っておこう
 ようやく日本でも、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID‐19)のワクチン接種が進み始めた。
 現在、日本で使われているCOVID-19のワクチンは、ファイザー社とモデルナ社(武田薬品)のもので、1人が同じものを2回接種する。6月7日現在、接種の対象となっているのは医療従事者と65歳以上の高齢者だ。同日までに医療従事者は495万4932人、高齢者は879万4696人、合計1374万9628人が、少なくとも1回目の接種を終えている(首相官邸のHPより)。
 これは、医療従事者は100%以上、高齢者は24.6%にあたる人数である。全国の市区町村では7月末をめどに、希望する全ての医療従事者と高齢者への2回目の接種を終える予定だ。その後は、基礎疾患のある人、高齢者施設で働く人に優先接種が行われ、順次それ以外の人にも接種が広げられていく。
 ワクチンによるCOVID-19の発症予防効果は95%(ファイザー製の場合)という高い数値を示しており、重症化予防の効果が証明されているほか、感染そのものを減らす可能性も期待されている。実際、高齢者施設の集団感染では、ワクチン接種の有無が発症の明暗を分けたケースもあるようだ。
 人口の大半が接種して免疫を獲得すれば、COVID-19に対抗できる集団免疫ができるので、行動の制限もなくなり、経済も正常化することが期待される。
 一方で、ワクチン接種をすると、一定の割合でアナフィラキシーショック(強いアレルギー反応)などの副反応が出ることも確認されている。重篤な症状が出た場合は障害が残ったり、最悪の場合は死亡したりする可能性もゼロではない。
 万一、ワクチンを接種したことで、思わぬ健康被害が出た場合は、どうなるのか。今回は、COVID-19のワクチンに対する国の補償について見ていきたい。
●COVID-19ワクチン接種は国が接種計画をけん引し、費用も国が全て負担
●副反応による健康被害が出た場合の補償も、高水準のものが設定されている
新型コロナウイルスワクチンは
全ての人が無料で接種できる
 予防接種には、予防接種法で規定されている「定期接種」「臨時接種」「新臨時接種」に加えて、インフルエンザ特別措置法で規定されている「特定接種」「住民接種」がある。このほか、予防接種法に規定されていない「任意接種」というものもある。
 いずれの種類についても、ワクチン政策上の目的に応じて、「実施主体をどこにするか」「対象者は誰が決めるか」「接種を強く勧めるか(接種勧奨)否か」「国民に接種するように努めることを課すか(努力義務)」「誰が費用を負担するのか」「健康被害が出たときの補償水準」などが決められている。
 COVID-19のための予防接種は、「まん延を予防する上で緊急性が高く、病原性が低い疾病と評価するのは難しい」と判断され、2020年12月2日に成立した「予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律(改正予防接種法)」で、「臨時接種の特例」と位置付けられた。
 本来の臨時接種は、実施主体が都道府県で、知事が対象者などを決める権限を持っている。接種にかかる費用は、都道府県や市町村の負担で、国はそれを補完する役割となる。だが、COVID-19のワクチンに関してはやり方は異なる。2020年初頭から続くコロナ禍は、国民の健康や生命、社会経済に大きな被害をもたらしており、国民全体にワクチンを円滑に接種する必要があるからだ。
 COVID-19のワクチンは国が主導して接種事業が行われており、国が接種の対象者や順位を決めている。厚生労働大臣の指示の下で、市町村が実施主体となって接種券の発送、予約のとりまとめなどを行い、都道府県には協力体制を作ることが求められている。そのため、今回に限り、通常の臨時接種とは別に、新型コロナ感染症対策として特例的に、接種にかかるワクチン費用や医療従事者の報酬などの必要経費を、全額、国が負担することになった。
 予防接種のなかには、個人から実費を徴収するものもあるが、まん延を防ぐために緊急性、必要性が高いと位置付けられている臨時接種は、そもそも自己負担はない。COVID-19のワクチンについても、この規定通り、全ての人が無料で接種を受けられる。
 ただし、このワクチンによる免疫の持続効果は未知数である。一度打てば、生涯免疫を獲得できるのか。それとも季節性インフルエンザのワクチンのようにシーズンごとに打つ必要があるのかは、現時点では分かっていない。そのため、無料措置が確定しているのは、今回の接種のみだ。季節性インフルエンザのように毎シーズンの接種が必要になった場合は、費用負担や実施主体などが改めて決められることになっている。
ワクチンによって重篤な障害が残ったら
予防接種健康被害救済制度で補償される
 予防接種法で定められている予防接種は、そのワクチンの目的に応じて、市町村や都道府県が住民に対して接種を勧める「接種勧奨」をするかどうか、国民がワクチンを打つように努める「努力義務」を求めるかどうかも決められている。
 ちなみに、現在の日本の予防接種における公的関与は、「勧奨」「努力義務」がギリギリで、接種を強制するものではない。接種しない人への罰則規定があるわけでもない。いずれのワクチンも、あくまでも本人(や保護者など)が納得した上で、接種するかどうかを決めることになっている。
 そして、ワクチンの副反応によって健康被害が出たときの補償内容も、接種勧奨と努力義務が課されているかどうかによって変わってくる。
 臨時接種は、まん延防止の観点から接種勧奨も努力義務も課せられており、現行法のなかでは、接種を強く進めるものに分類されている。

 だが、COVID-19のワクチンは、初めて使われるものなので評価が確定しておらず、使用実績も浅い。そのため、今回は、臨時接種のなかの特例として、接種勧奨も努力義務も「原則」にとどめ、必要に応じて例外的に、これらの規定を適用しなくてもよくなっている。
 とはいえ、感染拡大を抑えるためには、できるだけ多くの人が安心してワクチンを接種できる環境を整える必要がある。接種費用を無料にすると同時に、副反応による健康被害が出た場合の補償についても、高い水準のものが設定されている。
 そもそも一般的に予防接種による副反応は、接種した部分の痛みやかゆみ、発熱など比較的軽いものがほとんどである。だが、非常にまれではあるものの、神経障害や脳炎など重大な健康被害を引き起こす可能性もゼロではない。
 例えば、ジフテリア、百日ぜき、破傷風、ポリオを予防する4種混合ワクチンの場合、2012年10月~2013年7月までの間に、約213万回の接種が行われ、89件の副反応が報告されている。そのうち、医師が重篤と判断したものは49件。全体の0.0023%(10万件あたり2.3回)という、非常にまれなケースではあるが、健康被害が認められている(厚生労働省の資料より)。
 そのため、ワクチンを接種したことで、病気になったり、障害が残ったりするなど、重大な副反応が出た場合は、国の「予防接種健康被害救済制度」で補償されることになっている。
医療機関などの過失の有無にかかわらず、ワクチンを接種したことと副反応の因果関係が認められれば、治療にかかる医療費のほか、障害が残った場合の障害年金などが給付される。このときの給付額は、予防接種の種類によって、次のように決められている。
令和2年10月2日第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種事業について」より抜粋 拡大画像表示
 例えば、ワクチン接種後に障害状態になった場合に給付される障害年金(年額)の1級は、定期接種のA類疾病と臨時接種は約506万円だが、定期接種のB類疾病は約281万円と、かなりの差がある。
 COVID-19のワクチンも、「原則」とのただし書きがあるとはいえ、接種勧奨や努力義務が課されている。国民が安心して接種できるようにするために、万一の健康被害に備えて、上記の図表でいうと、一番左側の臨時接種と同様の高水準の救済措置が用意されている。
 死亡時の補償で比較すると、定期接種のB類疾病は最大でも2457万6000円(死亡したのが生計維持者の場合)の給付しか受けられないが、COVID-19のワクチンは4420万円を受け取ることができる。
 また、接種による健康被害が出て、ワクチンメーカーが患者に損害賠償を行うことになった場合は、メーカーが被った損失を国が補償できるような契約も結ばれている。
ワクチン接種後の死亡は接種との因果関係評価できず
接種・非接種のリスクとベネフィットをよく考えよう
 厚生労働省の「予防接種法に基づく医療機関からの副反応疑い報告状況について」(令和3年2月17日から5月16日報告分まで)によると、COVID-19のワクチンの副反応疑いは、推定接種回数611万2406回のうち7297件(0.12%)。このなかで、重篤として報告されたのは846件(0.01%)。また、接種後に死亡した事例が51件(0.0008%)あった。
 ただし、重篤と報告されたもののうち241件は、ワクチン接種との因果関係は不明だ。また、専門家の判断では、これまでの死亡事例については、いずれもワクチン接種との因果関係は評価できないとされている。
予防接種の副反応による健康被害は、非常にまれではあるものの、完全になくすことができないのが実情だ。とはいえ、その数は、感染症にかかって重症になったり、命を落としたりする人に比べるとケタ違いに少ないのだ。ワクチンを打つことのメリットが副反応のリスクを大きく上回ると判断されているため、世界の国々は感染症対策としてワクチンを導入している。
 ワクチン政策が、最大多数の最大幸福を目指すものである以上、その陰には、わずかでも健康被害の対象となる人が出てしまう。だが、そのジレンマの対処策は用意されている。それが、予防接種健康被害救済制度だ。
 統計上はわずかな数字でも、当事者になれば、そのリスクを100%受け止めなければならず、補償があるから健康被害が出てもいいというものではない。だが、万一の場合には、こうした制度があることも知っておけば、ワクチンを打つ際の一つの安心材料にはなるのではないだろうか。万一、COVID-19のワクチンを接種したことで重篤健康被害が出た場合は、市町村の窓口に相談してみよう。
 前述したように、COVID-19のワクチン接種を含む予防接種は努力義務で、受けるかどうかは個人の判断に任されている。それもあってか、ちまたには、ワクチンによる健康被害にフォーカスを当てた言説があふれており、ワクチンを打つことに強い拒否感を持っている人もいるのも事実だ。
 だが、今の閉塞した環境を打開するためには、より多くの人が予防接種を受けることで集団免疫を獲得し、人が自由に動ける環境を、できるだけ早く取り戻す必要があるだろう。COVID-19のワクチンは、そのゲームチェンジャーになることが期待されている。そして、万一の場合の救済策も整備されているのだ。
 65歳以上の高齢者への接種が一段落すれば、64歳以下の人にも接種の順番が回ってくる。ワクチンを受けることのリスクとベネフィット、そして受けないことのリスクとベネフィットは何か。そして万一の救済制度にも目を配ったうえで、自分はどうするのかを冷静に考え、決定してほしい。
早川幸子:フリーライター