izumiwakuhito’s blog

あなたでしたらどう思いますか?

子どもを産まない選択をしたい令和のDINKs、「世界は想像より優しかった」

下記に記事はダイヤモンドオンラインからの借用(コピー)です

Double Income(夫婦2人の収入)、No Kids(子どもがいない)の頭文字を取った言葉「DINKs(ディンクス)」。子どもを作らない選択をした共働きの夫婦のこと。しかし、一口にDINKsといっても、その選択をした理由は夫婦それぞれであるし、どのような生活を送っているかも夫婦によって違う。令和のDINKsのスタイルを探る。今回はシリーズ10回目。(フリーライター ふくだりょうこ)
子どもの頃から抱いていた子どもへの違和感
 今回、お話を伺ったのはIT会社で働くミイコさん(仮名)、30歳。2つ年上の、IT系企業でフリーランスとして働くシゲオさんと結婚してもうすぐ5年を迎える。結婚前から夫婦2人で生活していくということを決めていた。
 その理由の一つは、はミイコさん自身が子どもの頃から持っていた違和感だ。
「小学生の頃、友達が知育人形で遊ぶ様子に違和感を持っていました。
 普段ビデオゲームなどで一緒に遊んでいる仲の良い友達が、人形遊びを始めると当たり前のようにミルクをあげたり、おむつ替えをしてあげているんです。『かわいいね』って言いながら。でも、私は『お世話するの上手だね』って見ているだけ。思い返してみると、何をしたらいいんだろう、と取り残されている感じはありましたね」
だからといって、その場にがんばってなじもうということはなかった。単純に何をすればいいのか分からなかったのだ。ただ友達が遊んでいるのを見ながら時間をやり過ごしていた。このときはその「感じ」が何なのか明確に分かっていたわけではないが、子どもに対して関心が持てなかったのは小学生の頃からだ。
「今は友達や親戚の子どもは好きだって思えます。自分の友達は大切な人。大切な人の子どもは私にとっても大切な人、という認識ですね。子ども全体が好き、というのは言えない。子どもみんな好き!っていうのは、私からすると人間みんな好き! というのと同じなんですよね」
 ミイコさんのこの言葉に対しては思わずうなずいてしまうところがあった。子どもがみんな好き、と言ってしまうのは確かに少し危うさを感じてしまうかもしれない。
「自分は結婚できるのかな?」と思っていた
 一方、結婚に対してはどのように考えていたのだろうか。
「結婚してお嫁さんになるのが当たり前だという空気があった世代ですが、私は中学生の時から、自分は結婚できるのかな? と思っていました。一度、先生に相談したこともあります。『私はお料理もできないし、カップラーメンぐらいしか作れない。優しい気持ちも持てないから結婚できないんじゃないかな』。先生は笑っていました。ミイコさんは面白いこと言うね、って」
 自分が子どもの頃のことを振り返ってみるとどうだろうか。大人になったら当たり前のように結婚すると漠然と思っていた人も多いのではないか。どうして当たり前だと思っていたのか。結婚に対しても固定観念はなかっただろうか。
「結婚できる女性の一般的なイメージとして、料理やお裁縫ができて家庭的であるとか、旦那さんに優しく寄り添うんだ、という共通認識が当時はあったように思います。当時から、そこに自分が合致していないと感じていました。
周りの友達は小さい子どもと接するときはかわいいね、と自然と言えるし、自分が結婚したらどんなふうになるのか、という話はしていたように思いますが、周りの子たちが結婚というものにフィットしていく感じとちょっとズレているのかな、というのは自覚していました」
 ミイコさんが持っていた「結婚できないかもしれない」という気持ちは実際に結婚するまで続いていたという。
そのままでいいのだと思える人と出会えたこと
 夫のシゲオさんと出会ったのはSNSだった。
「知り合いの知り合い、というぐらいの距離感だったんですが、初めて会ってすぐに意気投合しました。会ったら、『結婚できないかもしれない』という気持ちが変わったんです。この人と結婚する、って思えました」
 気持ちが変わった大きな理由の一つが、ミイコさん自身が自然体でいられるということだった。
「『結婚できない』と思っていた自分でも一緒にいられる人だと思ったんです。例えば、服を選ぶにしても彼氏が欲しいな、って思ったときは好きなものを我慢したり、ちょっと抑えめにしてみたりしていました。でも夫と会ってからはモテとか気にしなくなった。私が好きなものを着ているのを見て喜んでくれる人だったんです」
 誰かに好きになってもらうために服を着るのではなく、着たい服を着た自分を好きになってくれる人と一緒にいる。それはとても自然なことなのに、誰かに好きになってもらうために、多くの人は自分を抑え込んでしまうのは確かにいびつだ。
 子どもはいらない、ということについてもそうだ。シゲオさんとは結婚前からその点についても共有できていたが、交際した男性に「子どもはいらない」と切り出すのはなかなかハードルが高い。
「男性と交際したときに、話の流れで『子どもができたら…』なんて話が出たら、わざわざ『私は子ども欲しくないんだよね』とは言えないじゃないですか。夫も子どもがいらないと思っている人だったのでそこでも自分を偽らずにいられたのは大きいですね」
DINKs』というワードがあってよかった
 結婚前から「子どもは持たない」という意識のすり合わせはできていたというミイコさんとシゲオさん。しかし、もともとはDINKsの自覚があったわけではない。
DINKsという言葉を知ってはいたんですけど、特に自分のことだとは思っていませんでした。ただ子どもが欲しくない同士でいるっていうだけのこと。でも、DINKsっていう概念と再会して『これは自分たちのことなんじゃないのかな』と気がついたタイミングがあったんです。
 DINKsという概念を共有することで目指すライフスタイルが見えた気がしました。そこで2人の人生について長い目で見られるようになったかな」
 また、DINKsという言葉があったおかげで、周りからの理解も得やすくなったという。
「母は私が産むものだと思っていたんですね。産まない、と伝えても『一人ぐらい産みなさい』って。親に理解されないというのは悲しかったんですけど、ある時テレビでDINKsを知ったみたいなんです。『あなたたちってこれなのね』と。今はこういう人たちもいるんだと、ふに落ちたのかな。急に多様な生き方を理解します、って言いだしました」
 自分とは違う行動をとっている人がいると不安になり、攻撃してしまったり拒絶してしまうことが時にはある。自分の辞書にないことならなおさらだ。それが行動や関係性に名前がつくことによって急に理解が進むようになるのかもしれない。
DINKsを自覚したからこそ今からできること
 話をお聞きしている中でミイコさん夫婦の仲の良さが伝わってくるシーンが多くあった。その秘訣を聞くと、「家族だから当たり前、という意識は薄いかもしれない」という答えが返ってきた。
「やってもらって当たり前というのがないですね。例えば、料理を作ってもらったら自然とありがとうを言うとか。あえて適度な距離感を保っているのかもしれないです。親しき仲にも礼儀あり、というか」
 家族だから、女だから、男だから、と発生する当たり前をいったん横に置いて、目の前にいる人と向き合ってみる。結婚も、家族としての接し方もそれが基本なのかもしれない。つい「家族なんだから」と当たり前を押し付けてしまうのは少し乱暴だ。
 老後についても、考え方はフラットだ。
「今は家を買いたいな、と思っています。DINKs向けの物件もちらほら見かけるようになっていて。ずっと2人でいることを想定していると、間取りなんかも考えやすいんですよね。老後まで住める家を今のうちに持っておきたいです。
 お墓は2人で入れるものを選ぼうと思っています。どちらか一人が残ったときのことも考えると、そのときは親族にもお願いしなければならなくなるかもしれない。そのためにも貯蓄はあったほうが安心かな、と。ただ、単身者が多ければ看取りサービスは発達しそうですよね」
「自分が想像していたよりもずっと優しい世界だった」
 ミイコさんのお話の中で印象的だったのが「私が想像していた世界と違った」という言葉だった。
「子どもを産まないって言ったらもっといじめられると思っていました(笑)。産まないからダメなやつなんだと言われる、と身構えていたんです。でも、ここ数年は周りの人たちが理解を示してくれるのがうれしいです。
 知り合って間もない婚活中の友人から『もうすぐ30歳半ばなんだけど、子どもどうしよう』という相談を受けていたんですけど、その話の流れでやっぱり『ミイコさんのところは子どもは考えているの?』と聞かれたんです。
 素直にうちは産まない選択をしていることを伝えたら『聞いちゃってごめんね』って気遣ってもらえた。そういうふうに言われたのは初めてだからびっくりしました。数年前だったら、『なんで子ども産まないの?』『産んだほうがいいよ』って言われていたのが、自分の考えをサッと受け入れてもらえてうれしかったです」
 人生は人それぞれ、全く同じ人生を歩む人はいない。人と違うと不安になることもある。ただ、その違いを受け入れることができるようになれば、生きやすくなる人はグッと増えるのではないだろうか。