「女性が逃げ出す地方は消滅する」コロナ禍でも東京一極集中が止まらないワケ

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です

当事者不在の会議で問題解決は困難
最近、森喜朗さんの発言が話題になりましたが、地域関係の会議もいまだ女性比率、若者比率は少ないものです。
事務局配慮により若者と女性が意識的に委員に入れられることもありますが、あくまで一部。女性枠、若者枠なんて言われ方をするくらいであり、マイノリティー扱いです。主体は学識として大学教授、各業界団体のトップなどです。結局高齢の男性であることが多いため、会議写真をみれば白髪の方々が並ぶことになります。
高齢男性が悪いとはいいません。彼らが覚悟をもって決めるべきこともあります。が、こと人口流出、少子高齢化などについては、地域を離れて上京した当事者たる若者や女性から話を聞かずして、どうして解決ができるか、と思うのです。
当事者がいない中で、課題解決を図ることなどはできないのです。さらに出ていく人たちが考える地域の課題すら解決できなければ、外から若者や女性にその地域に来ていただくことも難しいのは言うまでもないのです。
地域の変革よりも、棚ぼたを期待する人たち
昨年のコロナ禍の流行が始まった頃に「もう過密の東京は危険だから一極集中は終わる。そうすれば地方に人が流れてくる」といったような大変都合のよい幻想を抱く方がかなりいました。
結果は2020年、東京都人口は約8600人の増加。転入減少の中身をみても外国人の占める割合が多く、地方から東京への移動が減ったというのは限定的です。さらに東京から出ていった人たち半数は、行き先が埼玉、千葉、神奈川であり、東京圏で見た場合、約10万人の転入超過となりました。
実際問題、東京が何か悪いことをして地方から人を強奪しているわけではありません。東京と地方を比較した時に「魅力的ではない」部分が地方側に存在し、それを解決することがなければ、新たな成長を作り出すことは無理なのです。
こうした地方の解決は十分に可能なはずなのです。しかし地方の可能性すら信じていない方もいるのも事実です。
そもそも東京が悪くなって地方に人がくる、なんていう棚ぼた移住を期待するような人たちの地域に、どうして東京が嫌になったとしても行く人が出てくるでしょうか。
人が向かう地域は、確実に自らが動き変革を起こして、東京とは全く異なる軸で成長を実現しています。そういう地域はコロナ頼みの人口移動に期待はしていません。他人の没落を期待する前に、自分たちの改善と向き合うのが先であり、そちらのほうが確実にできる努力なのです。
「20代女性」に完全に見放されている地方の現実
そもそも地方からの人口流出は前述の通り、若者であり、女性です。より具体的に言えば、20~24歳の女性が地方に見切りをつけて、東京に向かっています。
2019年、20~24歳の男性の東京都への転入超過数は2万5512人。一方、女性は3万1685人となりました。最新の2020年統計をみても、2019年と比較すれば減少しているとはいえ、男性の20~24歳の転入超過数は2万2921人、女性は2万7418人です。女性優位は続き、流入超過数もあまり変わっていません。
新型コロナウイルスの脅威よりも、地方で自分の人生のキャリアをスタートさせることへの不安のほうが大きいと判断している若者、特に女性が多くいるということです。
人口流出問題を取り上げるとすれば、この20~24歳の人たちの願いをどれだけ地方がかなえられるか、がテーマになるはずなのです。
しかし、実態はいまだに地方創生、人口の東京一極集中の是正という名目で、意味不明な箱モノを作ってみたり、観光企画や街路整備をやったりしているわけです。的外れにも程があります。
20~24歳の上京要因の多くは就職選択です。今後の人生のキャリアを形成していく上で、地方企業ではなく、在京企業を選択している背景にあるのは結局のところ、地方企業の女性雇用が全く魅力的ではないことです。
どうにも経営者が集まる会議になると、いまだに「最近の若者は我慢がたりない。すぐに辞めてしまう」という声を耳にすることが多くあります。
しかし、そんなことを言っていたら、ますます人は出ていってしまい、雇える人すら地元からいなくなります。変わるべきは企業側なのです。
生産年齢人口は、総人口よりハイスピードで減少していますから、「雇ってやる」から「雇わせていただく」という時代に変化していると捉えるしかありません。変わるべきは若者や女性ではなく、そもそも地域を構成する企業の経営者たちなのです。
地方に補助金より大切なのは「キャリア形成」
特に産業力が強い、地方で大手企業が集積する地域であっても、女性がどんどん流出する場合もあります。
典型的な地域が愛知県です。愛知県の多く地域は、女性の人口流出が激しく、2018年には年間1615人の20~24歳女性が東京圏に転出超過。都道県別での男性余りを示す男女性比が2019年にはワースト3位を記録しました。
この危機的状況を鑑みて愛知県が行った「若年女性の東京圏転出入に関する意識調査結果」によれば、キャリア形成に意欲がある女性は、結婚・出産後も働き続けるには地元を出るしか無いと考える人が多いことが明らかになっています。地元企業では未来が見えないと考えている方が多いことがうかがえます。
一方、地元に残る女性は結婚・出産するまで働ければ良いと考えている方が占めています。つまり、地元を離れるしかないと考える女性、地元に残ると考える女性の双方に、「キャリアアップ可能な仕事が地元にない」と判断されているのです。
そして、就職後の活躍の機会、仕事の内容待遇、職場環境などの多くの項目で上京した人のほうが満足度が高く出ています。それを見ている下の世代は、さらに機会を求めて外に出ていくという連鎖が生じているのです。
今の時代、自分の人生を豊かにしたいとキャリアアップを考えるのは当然です。それに対応できない企業が支持されず、地方からの人口流出が止まらない現状になっています。これは経営者側の問題です。
地方でも人が集まる企業の条件
2020年に内閣府は、女性の社会参画に関する「第5次男女共同参画基本計画」において、「地域に性差への偏見が根強く存在している」と指摘しています。
また、地方の人口減少が進む要因として若い女性の都市部への転入が多いとし、その背景には「企業経営者などの理解が足りず、やりがいが感じられない環境になっている」と指摘しています。
この答申自体に書かれても今更という感はありますが、地方における経営者たちの理解不足を挙げています。
私は仕事柄さまざまな地方経営者の方とお会いします。若い世代、女性が次々と就職希望を出す企業と、そうでない企業との差は大きく、前者はまれです。
人材が集まる企業はちゃんと男女共にキャリアアップできるように、老舗企業であってもブランド・マネジメント職などを採用して新規事業に取り組んでいます。手取りの少ない若い世代に向けて社宅などの福利厚生を整備し、オフィス環境もデザインに配慮しています。若者、女性にフレンドリーな体制を築いているのです。
先程指摘した女性流出県である愛知県においても、若い世代の人材獲得に成功している老舗企業があります。室町時代にルーツを持つ麹種会社「糀屋三左衛門」(豊橋市)では、元々は応募ゼロだった営業事務などの仕事を刷新。社長直轄の新規事業部門を立ち上げ、社内制度も大幅に刷新し、キャリア形成可能なブランドマネジメント職の採用に乗り出したところ多様なキャリアを持つ女性人材の応募が殺到しています。
社長が変わり、人事が変われば、中小企業であってもしっかりと人が集まるのです。そして同社では採用人材が大活躍し、会社業績にも貢献。いち早く係長に昇進するに至っています。会社に人が合わせるのではなく、人に会社が合わせることが、会社の成長、そして地域の成長に繋がる時代が到来しています。
木下斉『まちづくり幻想』(SB新書)
都内であればベンチャーのような中小零細企業の部類でも、当然ながらこのような工夫をしています。つまり資本力の問題でもなく、そこが重要だと思っているかどうかの違いなのです。
地方企業ではお茶くみ、制服、スチールのデスクなど昭和な体制を続けている企業もあります。いまだに男性社員の結婚相手を確保するくらいの気持ちで女性を採用している企業もあるのです。
そういう企業では、社長が「骨を埋める覚悟はあるのか」と社員に迫まり、若い男性すら逃げていったりします。しかし、地域内ではこの手の社長のほうが影響力が大きい場合があるのです。
人口減少対策は、移住定住促進では不十分だ
国単位での急激な人口減少は食い止められる段階をとうの昔に超えています。いまさら国費をかけて、自治体間で人口の取り合いをしても不毛でしかありません。
一方で、人がいなくなったら地域は終わりか、といえばそんなことはありません。高付加価値商品・サービスを持つ少人口地域が生き残るケースは世界各地に存在します。
地方企業が、20~24歳の女性たちにキャリア形成が可能だと思われるようなフェアな条件を持ち、夢があると感じてもらえる新規事業を地域で作り出すことは、単に人口流出対策ではなく、少人口でも適切な成長を果たすための第一歩になるでしょう。