izumiwakuhito’s blog

あなたでしたらどう思いますか?

短時間睡眠を続けると、人はどうなるのか?

下記はヨミドクターオンラインからの借用(コピー)です


精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。
 「やりたいことがあるけど時間がない」「仕事や勉強が間に合わず時間が足りない」――。そのようなとき、「眠らないで済むなら……」と考えることがありますよね。古今東西を問わず、睡眠研究者も長年「短時間睡眠法」に取り組んできました。果たして成功したのでしょうか?
人為的に睡眠を削る実験
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 短時間睡眠生活を目指す一番シンプルな方法として、睡眠時間を徐々に短くする実験がいくつか行われています。例えば、普段7時間眠っている人の場合、30分短くして6時間半睡眠で数日過ごし、その次は6時間睡眠で数日過ごし、と進めていくわけです。ところが、多くの場合、ある程度まで睡眠時間が短くなった段階で蓄積した眠気のために 堪こら えきれなくなって「爆睡」してしまい、その翌日からは元の睡眠時間に戻ってしまいます。
 このように、計画的にゆっくりと睡眠時間を削っても、短時間睡眠のまま安定した生活を続けることはできません。加齢とともに人の睡眠時間は短くなりますが、実際は平均すると10年間で10分ほどのゆっくりペースです。しかも、人の必要睡眠時間は体質的に決まっている部分が大きいため、短期間に人為的に短くすることはできないのです。
 ある意味、現代人は短時間睡眠が常態化しているとも言えます。平日に睡眠不足を続け、週末に堪えきれなくなって寝だめをしている方が読者の中にもおられると思います。上記の実験の小型版を毎週繰り返していると言えます。「それでも何とか生活できている」と言う方もおられますが、落とし穴が数多くあります。
無意識に認知機能が低下していく
 今回お伝えしたいのは、睡眠時間を削っている間、眠気の高まりは比較的ゆっくり進んでいくのに対して、認知機能は早期から低下する点です。睡眠時間を削って間もない、眠気がさほど強くない時期でさえ認知機能は低下しています。人は睡眠不足の有無を眠気の強さで評価することが多いため、心身への影響を感知できず、「眠気がないから大丈夫」と考えがちです。睡眠不足時の事故は居眠りだけで起こるわけではありません。認知機能の低下によるヒューマンエラーや大きな事故、それに体調が悪いのに働き続けることでミスや損失が発生しやすくなる状態の「プレゼンティーイズム」などにつながります。特に、高いパフォーマンスを要求される仕事や、運転や大型機器操作などの危険作業に従事する人は要注意です。
断眠がもたらす誇大妄想や幻覚、極度の被害妄想
 短時間睡眠実験の究極版である「(長時間眠らずに過ごす)断眠実験」も行われているのでご紹介しましょう。一番有名なものは、米国西海岸の男子高校生が樹立した264時間(11日間)、連続で覚醒していた記録です。決して元気に過ごしたわけではありません。最初の2日は眠気と 倦怠けんたい 感で済んでいましたが、4日目には自分が有名プロスポーツ選手であるという誇大妄想、6日目には幻覚、9日目には視力低下や被害妄想、終了間際には極度の記憶障害などが生じたそうです。彼はその後一体どうなったでしょうか? ご安心ください。実験終了後に15時間ほど爆睡した後、元気に覚醒し、なんら後遺症もなかったそうです。
 この実験は医学的な管理の下、純粋に研究目的で行われたものなので、まねしようなどとは思わないでください。実際、長期間の断眠は心身に大きな負荷がかかります。ラットを用いて長期間断眠する実験では、体重や活動性は減少し、免疫機能も低下、微生物による感染が目立つようになり、2週間足らずですべて死んでしまいました。
 睡眠は健康の源です。睡眠時間を削っても健康で質の高い生活が送れないのでは意味がありません。(三島和夫 精神科医