アルツハイマー病の原因「アミロイドβとは」いつからたまり始める?

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認知症全体の7割近くを占めるといわれている「アルツハイマー病」は、脳にアミロイドβというたんぱく質がたまることで神経細胞が壊れていくことが原因の1つとされています。このアミロイドβがたまり始めてから発症するまでの期間は、どのくらいと言われているでしょう。

高齢化の進行とともに増加する認知症患者
 増加の一途をたどっている認知症は、誰もがかかりたくない病気の代表でしょう。認知症患者は、2025年には700万人に達すると予想されています。もはや認知症は決して珍しい病気ではなく、誰がなってもおかしくない時代に突入しています。
 近年、認知症が大きな問題になっているのは、日本人の寿命が延びているからという事情もあります。認知症の発症は年齢とともに高まります。以前なら、認知症を発症する前に脳卒中心筋梗塞、あるいは感染症などの病気により亡くなっていたものが、寿命が延びることにより認知症を発症する年齢まで長生きする人が増え、結果的に認知症患者が増えているわけです。
認知症の7割近くを占めるアルツハイマー
 認知症には大きく4つのタイプがあります。最も多いのは「アルツハイマー病」。主に、脳にアミロイドβというたんぱく質がたまることで神経細胞が壊れていくもので、認知症全体の7割近くを占めるといわれています。次に多いのが「血管性認知症」。脳梗塞脳出血によって脳の神経細胞が死滅してしまいます。さらに、シヌクレインというたんぱく質が原因で起こる「レビー小体型認知症」、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮する「前頭側頭型認知症」が続きます。
 この中で、多くの人が気になるのはアルツハイマー病しょう。前述したように、アルツハイマー病はアミロイドβというたんぱく質が脳にたまるところから始まります。アミロイドβがたまると脳に老人斑というシミができ、やがて神経細胞が破壊されて脳が萎縮していきます。
 最初に起こる症状は記憶障害です。認知症の専門家である国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長の櫻井孝さんは、「アルツハイマーでは早期から海馬に強い萎縮が見られ、病気の進行とともに脳全体が萎縮していきます」と話します。記憶を司る海馬の神経細胞が破壊されることで、記憶を保てなくなるわけです。
 何十年も昔の古い記憶よりも、昨日今日の新しい記憶から先に失われるのが特徴です。年を取ると脳の機能が低下して誰でも“もの忘れ”が増えますが、もの忘れが「部分」を忘れるのに対し、認知症は「全体」を忘れます。簡単に言うと、昨日の夕食の内容を忘れるのがもの忘れで、昨日夕食を食べた記憶がないのが認知症です。
アミロイドβがたまり始めてから発症するまで20~30年かかる
 アルツハイマー病はどのようなプロセスを経て進行していくのでしょうか。下の図にあるように、アルツハイマー病は、正常な状態から「前臨床期」⇒「軽度認知障害(MCI*1)」⇒「認知症」という流れで進行していきます。脳の萎縮や認知機能の低下は、前臨床期の後半から始まり、MCIのフェーズで一気に進みます。
*1 MCIは、日常生活に支障はないが、認知機能が低下している(もの忘れが多くなる)状態で、認知症の前段階に当たる。MCIと診断されても、正常に戻ることができる可能性がある。
アルツハイマー病の進み方とアミロイドβの蓄積の関係
 アルツハイマー病の主原因とされるアミロイドβの蓄積は、脳の萎縮や認知機能の低下が進行する遥か前の正常な状態から始まっているのです。そこから軽度認知障害に至るまでの間にアミロイドβの蓄積は着々と進んでいますが(前臨床期)、その間に自覚症状(および他覚的症状)はなく、通常の検査では分かりません。
 櫻井さんは、「従来、認知症というと、発症した後のところしか見ていませんでした。70歳すぎから認知症患者が増加して、だいたい10年くらいの臨床経過を経るというのが私が学生の頃に教わった認知症の姿です。ところが、ここ10年ほどの研究により、アルツハイマー病が数十年にわたる病気であることが分かってきたのです」と話します。
その背景にあるのが、ここ10年ほどで確立した「アミロイドPET検査」という、脳内にどれだけアミロイドβが蓄積しているかをイメージとして把握できる技術の登場だったと櫻井さんは話します。「この技術により、生きている人の脳内の蓄積状況を把握できるようになりました。大きな技術革新です。PETのデータが世界中から集まるようになり、その結果から、発症時には相当な量のアミロイドβが蓄積しており、さらに前に追跡していくと20~30年前からたまり始めていることが分かったわけです」(櫻井さん)
 つまり、アミロイドβがたまり始めてから、MCIを経て認知症を発症するまでには20~30年もの長い時間がかかるわけです。これは、70~80歳で認知症を発症するとしたら、実は40代や50代からアミロイドβがたまり始めていたということです。
 ということは、将来の認知症リスクを下げたいなら、40代や50代といった若い世代から、対策に着手することが望ましいということです。
脳の血管の老化を防ぎ、血流を高めるのがポイント
 では、具体的にどんなことをするといいのでしょうか。
 「対策のポイントの一つが、脳の血管の老化を防ぎ、血流を高めることです。脳の血流が悪くなると(脳の虚血)、アミロイドβの産生が高まるという動物実験のデータもあります。そして、血管の老化を防ぐことは、脳の血管病変を防ぐことにつながります」と櫻井さん。
 血管の老化を進める大きな原因となるのが動脈硬化です。そして、動脈硬化を進める要因として、高血圧、高血糖などがあるのも周知の通り。つまり、動脈硬化を引き起こす「生活習慣病」を防ぐ生活、具体的には食生活の改善、そして有酸素運動などを心がければ、血管の老化を防ぎ、さらにアルツハイマー病のリスクを下げることにつながるというわけです。
 実際、生活習慣病アルツハイマー病の発症リスクを高めることはさまざまな研究から明らかになっています。東京医科大学老年病科を受診した113人のアルツハイマー病患者(平均78.6歳)のうち、48%は脂質異常症、42%は高血圧、19%は糖尿病を合併していました(Geriatr Gerontol Int. 2010;10:216-7.)。また、福岡県久山町の住民を対象にした疫学調査(久山町スタディ)から、糖尿病とその予備群がアルツハイマー病を発症するリスクは、血糖値が正常な人の2倍以上になることも確認されています(Neurology. 2011;77:1126-34.)。
 なお、アミロイドβの蓄積が進んでも、必ずしも認知症を発症するわけではないことも最新の研究から分かっています。
 米国で75~102歳のシスター678人の協力を得て行われた有名なナン・スタディから、アルツハイマー病を発症するレベルの量のアミロイドβがたまっていたのに、認知症を発症していない人が一定数いることが分かったのです。
 「一定量アミロイドβがたまれば自動的に認知症アルツハイマー病)になるわけではありません。アミロイドβが一定量たまっていても、知的活動や生活習慣によって、認知症が発症しにくくなる可能性がある、ということです。人間は病変に打ち勝つことができることが分かってきたのです」(櫻井さん)

アミロイドβとは?

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アミロイドβを説明する前に、まずアルツハイマー認知症の脳で何が起こっているのか、簡単に説明します。アルツハイマー病の脳にはシミや糸くずがある?
20世紀の初め、ドイツの医学者アルツハイマー博士は、生前に妄想や記憶障害のあった女性の脳組織を顕微鏡で調べ、脳の萎縮や、脳内のシミのような物(老人斑)、脳神経の中に糸くずのようなもつれ(神経原線維変化)を発見しました。
その後、この特徴を示す病気を老人性の物忘れと分けて「アルツハイマー認知症」と呼ぶようになったのです。
アミロイドβとは?
アミロイドβは、アルツハイマー認知症に見られる老人斑の大部分を構成しているたんぱく質で、健康な人の脳にも存在し、通常は脳内のゴミとして短期間で分解され排出されます。
しかし、正常なアミロイドβよりも大きな異常なたんぱく質ができてしまうと、排出されずに蓄積してしまうのです。実は認知症を発症する20年も前から脳に溜まり始めていると言われています。
蓄積したアミロイドβは、脳細胞を死滅させると考えられています。記憶の主体である脳細胞が死滅すれば物忘れが起こると考えれば、イメージしやすいでしょう。また、アミロイドβは血管の壁に沈着することもあり、脳出血の原因となることもあります。
かつてはアミロイドβの蓄積を確認するには、死後の脳組織を顕微鏡で観察するしかありませんでした。しかし、今ではアミロイドPET(アミロイドイメージング)という検査により、画像診断で生きている人の脳内のアミロイドβの蓄積量が分かるようになりました。アミロイドβはなぜ溜まってしまうのか
体を作る栄養素たんぱく質は、体内でアミノ酸に分解され一旦肝臓に蓄えられます。そこから各臓器に送られ、アミノ酸からそれぞれの臓器に必要なたんぱく質が作られます。
アミロイドβは、脳内で作られたたんぱく質が分解されたもので、40個前後のアミノ酸からできています。分解される時の微妙な切れ目の差で、無害で排出されやすいものと、毒性が強く、たんぱく質同士が互いにくっついて脳に溜まりやすいものに分かれます。
蓄積のメカニズムについては、まだ完全には解明されていませんが、加齢などにより分解や排出がうまくいかなくなると、毒性の強いアミロイドβが溜まり始めると言われています。
最新の研究では、アミロイドβの蓄積をアルツハイマー認知症の始まりとする「アミロイドβ仮説」に基づき、毒性の強いアミロイドβの産生を抑え、分解や排出を促す方法が研究されています。アミロイドβ仮説とは?
アルツハイマー認知症の発症について以下の仮説で、2010年に提唱されました。アルツハイマー認知症の原因と考えられている仮説の中でも、現在最も有力と言われているものです。
1.たんぱく質を分解する酵素の働きの変化により、蓄積しやすいアミロイドβの割合が増えて脳に溜まり始める。
2.アミロイドβの毒性により、神経細胞シナプス神経細胞同士を繋ぐネットワーク)が傷つけられ、糸くずのような神経原線維変化を起こす。
3.傷ついた神経細胞が次々と死んでいくことにより、脳が委縮し認知症を発症する。
現在の新薬開発の主流は、このアミロイドβ仮説に基づいていますが、他にもアリセプトやレミニールなど、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬開発の元となったアセチルコリン仮説やオリゴマー仮説などがあります。アミロイドβ仮説を否定し、別のアプローチをする研究もあります。「老人斑」や「神経原線維変化」はあくまでも結果
アミロイドβが溜まって老人斑ができ、神経原線維変化が起こると、必ず認知機能が低下してしまうのでしょうか。実はそうではありません。老人斑や神経原線維変化は、アルツハイマー認知症の人に特徴的な変化として現れますが、アルツハイマー認知症ではない人にも見られます。
これらの変化は、現段階ではアルツハイマーの「原因」ではなく、あくまでも「結果」なのです。中には老人斑や神経原線維変化がたくさんあっても、症状が出ない人もいます。
例えば、アメリカの修道女シスター・メアリーの話が有名です。死後、脳の病理解剖によってたくさんの老人斑や神経原線維変化が見つかりましたが、101歳で亡くなるまで認知症の症状は一切出ていませんでした。他にも研究に協力した多くの修道女で同様のケースが確認されています。
これらのことから、生き方、脳の使い方に認知症予防の鍵があるのではないかと、現在更なる研究も進められています。