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「子どもを3人育てるのは正直キツい」そんな国で少子化が進むのは当たり前だ

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です   記事はテキストに変換していますから画像は出ません

日本では少子高齢化が進んでいる。その原因はなにか。経済アナリストの森永康平氏は「私は3人の子どもを育てているが、教育費などを考えるとちょっとキツいなと思う。そうした状況で少子化が止まるはずがない」という――。
※本稿は、森永康平『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
なぜ子どもが少なくなっているのか
日本で人口減少、少子高齢化が進んでいることは、小学生でも知っていることでしょう。人口問題研究所の推計では、2065年には総人口が1億人どころか9000万人を割り込み、そのうち65歳以上が人口に占める割合を表す高齢化率は38%台になると予想されています。この少子高齢化は、社会保障費の増大や労働力の減少など、私たちの生活に様々な課題をもたらす大きな問題です。
ということは改めていわれなくてもご存知の方は多いですよね。では、なぜ子どもが少なくなっているのか。みなさんはその理由がわかりますか?
財務省が発表した『若年層の結婚をめぐる状況について』に載っているいくつかのグラフを見てみましょう。
出所=『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)より
それぞれの調査項目について、1980年から2015年まで5年ごとの推移がグラフになっています。日本では晩婚化が進み、未婚のまま暮らす人が男女ともに増えていることが図表1でわかるでしょう。
結婚したくても、子どもを産みたくてもお金がない
しかし、未婚者に結婚の意思を確認すると、同調査によれば「結婚をするつもりはない」と回答する人の比率はわずかに上昇しているだけで、「いずれ結婚するつもり」と回答している人がほとんどです。
出所=『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)より
それでは、なぜ結婚する意志はあっても未婚の人が増えたり、晩婚化が進んだりするのでしょうか?
結婚の壁となっているのは圧倒的に金銭面の問題です。年収別の既婚率を見ると、年収が低い人ほど結婚をしていません。その一方で年収が低いとされる非正規雇用比率が男性で上昇しています。
日本では平均年収が下がり、非正規雇用が増えていくという非常におかしな状態が何年も続いており、その結果、結婚しない、子どもを産まないという判断が一般的になりつつあります。
出所=『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)より
日本で子ども1人を育て上げるのは大変?
私の知人にも非正規雇用の人はいます。その知人から聞いた話でショックだったことは、何年も付き合っている彼女と結婚をしたいが、なかなかプロポーズができないという話でした。
詳しくその理由を聞いてみると、やはり非正規雇用は不安定な立場なので、相手の両親が結婚を反対しそうだということが一つ。そして、彼女が結婚をしたら子どもが欲しいといっているものの、いまの自分の年収では2人で暮らしていくだけでも精一杯だから、ということでした。
では実際に子育てにはどれぐらいお金がかかるのでしょう?
仮に子どもが幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と全て公立に通った場合、教育費は合計でいくらかかるのか、皆さんはご存知でしょうか。
ちなみに私は小学校と中学校は公立でしたが、内申点が低すぎて県立高校は受からず、高校から私立へ通いました。2020年に「高等学校等就学支援金制度」が拡充されたことで、現在は公立・私立問わず高校生までは学費がほとんどかからなくなりましたが、当時はこのような制度もなく、私立高校の学費が非常に高かったことを考えると、金銭的な面で親不孝だったかもしれません。
大学まですべて公立でも教育費は約1000万円
さて、話を元に戻しましょう。質問は幼稚園から大学まですべて公立に通った場合の教育費でしたね。その金額は、約1000万円です。
出所=『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版)より
文部科学省が2019年12月に発表した「平成30年度子供の学習費調査」によれば、幼稚園から高校まで公立の場合は543万5958円。そして、日本政策金融公庫が2020年3月に発表した「令和元年度 教育費負担の実態調査」によれば、国公立大学に自宅から4年間通学した場合は約499.4万円かかります。
よって、合計すると1042万9958円となります。
この金額を見て、将来が不安になるかならないかは人それぞれでしょう。ただ、ゆとりある老後生活を送るため、定年退職までに2000万円は貯めなければいけない(老後2000万円問題)というのに、子どもを1人育て上げるのに1000万円以上かかることを思うと私は不安になります。なにせ私の場合は子どもが3人いますので、必要な金額は単純計算で3倍に膨れ上がるわけですから。
子どもが習い事をしたい、私立に行きたい、留学したいとなれば、親としては経済的な理由で「ダメだ」とはいいたくないですし、可能な限り応援してあげたいものです。さらに子どもの洋服やレジャー用品などにもお金がかかります。
そう考えるとお金はいくらあっても足りない。子ども1人ならまだしも、3人ともなると育てるのはちょっときついな……。私でなくても、そんなふうに考える人は多いのではないでしょうか?
子育てを通じて国の在り方を考える
ただ、私が3人の子どもを育てる中で感じるのは、子育てをすることは、自分が子どもだった時の親の気持ちを、我が子を通じて再体験しているということです。
あの時、「親はこう思っていたのではないか」、「この子の将来を考えると……」など子どもの時は考えることもなかったようなことを考えられるようになりました。
そうやって、子育てを通じてある意味での修行をすることで、子どもや孫には素晴らしい国で楽しく豊かに暮らしてもらいたいという強い思いが芽生え、一国民として国の在り方を考える機会が生まれる。私はそう思っています。
つまり、多くの人が結婚をせず、子育てもしないという選択肢を取らざるを得ない状態を放置するのであれば、それは「いまだけ、自分だけ」のことばかりが気になり、国の在り方や行く末を考える機会に恵まれない人を増やしてしまうことにつながるのではないかと思うのです。
子どものことを考えれば考えるほど少子化が進む
これまで見てきたように、現実の数字に目を向けると、誰もが「しっかりと子どもを育て上げることができるのか?」と、結婚する前から不安になってしまうのも無理のないことだと思います。
まして職が安定していない非正規雇用であったりすると、先の私の知人のようにその不安はさらに大きくなるはずです。
真面目に子どものことを考えれば考えるほど、結果として少子化が進んでしまうのは非常に残念なことですし、国としても非常によくない事態です。
本当に必要な金融教育とは?
では、何をすればこのような流れを変えることができるのでしょうか? それにはまず一人ひとりがお金に関する知識や教養を深めることが大事だと私は思っています。
森永康平『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』(あさ出版
そうすることで、自分の身の回りの状況や日本の経済状況、政府の政策の意味などが段々と理解できるようになってきます。
経済や政治に興味を持つことができれば、少しでも行動をしたり発信したりするようにもなるでしょう。そうした波が、少しずつ積み重なっていくことで大きなうねりを起こし、世の中の流れを変えることにつながると私は考えています。
2022年4月から日本でもやっと(高校の家庭科において)金融教育が始まります。ただ、日本で「金融教育」というと、イコール投資になりがちです。
金融教育には節約や詐欺から身を守る方法なども含まれますし、会計や経済の知識を身につけることも含まれなければならない。またそうでないと本当の知識や教養は身につかない、私はそう考えています。
日本で行われる金融教育を受けた多くの人が、身近な「お金」から「社会の問題」といった国家レベルのことまで深く考え、行動できるようになることを心から願っています。
森永 康平経済アナリスト