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40代から増える「大腸がん」、早期発見なら手術ナシで完治も

下記は日経グッディオンラインからの借用(コピー)です  記事はテキストに変換していますから画像は出ません

女性のがん死亡数1位、罹患率でも男女合わせて1位になっている「大腸がん」。早期発見で9割以上の治癒が見込める大腸がんは、「検診」が重要な防衛策になります。近年、検査技術の発達で発見や診断の精度が向上し、治療も遺伝子検査による個別化の動きが加速しています。大腸がん検査の基本から最新治療法までを解説します。
こんな人は大腸がんリスクが高いかも
食物繊維が不足気味
飲酒習慣がある
喫煙習慣がある
運動不足気味だ
肉(特に保存性の高い加工肉)を好んで食べる
身内に大腸がんを患った人がいる

 上は大腸がんのおもなリスク因子。50歳以上で心配な人は内視鏡検査を一度受けておくのも手だ。食物繊維の摂取量が極端に少ないとリスクが上がる。排便時の出血や便通の異常などの自覚症状が続いたらリスク因子の有無にかかわらず消化器科の受診を!
【大腸がんの検査】
基本は年1回の便潜血検査 50歳過ぎたら内視鏡も視野に
 「大腸がんは、症状が出てからでは致命的な進行状態で発見されることも多い一方、無症状のうちに検診で見つかった場合の治癒率は高い」と話すのは京都府立医科大学消化器内科の吉田直久講師。
女性のがん死亡数1位が大腸がんに!
大腸がんは2003年以降、それまで1位だった胃がんを抜いて死亡数トップのがんに。最新の統計(2018年)では、年間約2万3000人の女性が大腸がんで亡くなっている。なお、罹患数もこの40年近くで7倍以上にも増えている。(データ:国立がん研究センターがん情報サービス[がん登録・統計]人口動態統計)
大腸がんがおもに発生しやすいのは直腸
大腸は1.5~2mほどの臓器で、盲腸~S状結腸までを指す「結腸」と残りの「直腸」に大きく分けられる。がんは大腸内腔の粘膜に発生し、最も多いのは直腸にできるがんで大腸がん全体の約3分の1を占める。日本人はS状結腸と直腸にできやすいといわれている。(データ:国立がん研究センターがん情報サービス[がん登録・統計]2017年データ)
 便潜血検査を毎年受け、陽性が出たら必ず精密検査を受けることが、がんから命を守る鉄則だ。「2つの便検体のうち、1つでも陽性が出たら、どちらも陰性の場合の数十倍もがんである確率が高い。必ず精密検査を」と吉田講師は訴える。
 精密検査の主流は内視鏡だ。「腸内を照らす光源やがん発見率を高める画像処理技術は年々進歩し、日本は世界をリードしている」と吉田講師。AIを活用し、微小な病変の発見・診断を補助するシステムも使われ始めている。
LEDやレーザー内視鏡で診断精度UP!
特殊な波長のレーザー光や明度を高めるLED光を用いて観察部位を照らし、コンピュータ処理して病変を見つけやすくする内視鏡が登場。画像強調内視鏡とも呼ばれ、LCI、BLIといった特殊モードで観察することで、より診断精度が高まった。
 内視鏡検査の前にのむ洗腸剤が苦痛という声も多いが、「近年は、以前に比べ少量でよく、味も改善されている」(吉田講師)。
今のところ内視鏡による検診は任意のみだが、「罹患リスクが上がる50歳以上で、1回は国の補助で検査が受けられるよう医学会を中心に検討する動きもある」(吉田講師)。
 ただし頻繁に受ける必要はない。「がんが発生してから命にかかわる深刻な状態になるまでには5〜10年はかかる。1回受けて異常がなければ次は5年以上先でいい」と吉田講師は話す。
まずは便潜血検査で異常の有無を確認
便潜血検査では2日間便を採取し、血液が混じっているかどうかを調べる。1日分だけでも陽性が出たら大腸内の病変が便とこすれて出血している疑いがあるため、内視鏡による二次(精密)検査で詳しく調べる必要がある。
(データ:厚生労働省平成29年度地域保健・健康増進事業報告および、吉田講師への取材をもとに作成)
検査項目で見かけるコロノグラフィとは?
CTで大腸内の断層写真を撮る画像検査で大腸がん発見に有用とされている。機器の挿入がないので負担が少ない。検診では自費だが精密検査では保険適用。なお通常のCTは病変を鮮明に映せず早期がんの発見には不向き。
【大腸がんの治療】
内視鏡での切除は早期がんに適応 良性腫瘍も除去すればがん予防に
 大腸がんの標準治療は他の多くのがんと同様、手術・放射線・薬物を病状に合わせて組み合わせるが、早期の大腸がんの中には内視鏡での切除が可能なものが相当数あり、それだけで治癒が見込める(下図参照)。
早期がんでも粘膜内なら内視鏡で切除、深いと早期でも外科手術に
同じ早期がんでも深さによって治療法が異なる。粘膜下層と呼ばれる部分まで達していると血液やリンパの流れがあり転移の恐れがあるため、外科手術でがんと周囲の組織も治療する必要がある。
 一方で、「治療前の内視鏡検査だけで正しく診断できる確率は90%弱。切除した組織を調べた結果、後から手術が必要になったり、逆に手術後、内視鏡治療で治癒しえたことがわかるケースもまれにあるため、治療前の説明はよく聞いてほしい」と吉田講師。また、良性のポリープの中にも将来がん化するものがあり、「精密検査時に切除しておけば、がんの予防になる」(吉田講師)。
 切除法は病変の深さや大きさにより異なるが、スネア(輪)をかけて切離したり、精密な内視鏡メスで剥離する方法など。開腹しないですむので手術に比べて身体的負担は少なく、日帰り~数日程度の入院で処置できる。
標準治療は手術、放射線、薬物
1. 手術、内視鏡治療
がんを内視鏡や外科手術で切除。手術は開腹が基本だが、がんの部位や患者の体格などによっては腹腔鏡下による切除の適応になることも。  
2. 放射線
切除可能ながんを対象に、おもに術前に照射し再発を抑える「補助放射線治療」と、再発・転移による症状緩和を目的とした「緩和的放射線治療」がある。  
3. 薬物治療
手術後の再発を防ぐ目的で行う「補助化学療法」と、手術が難しく、症状を緩和する目的で行う「切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法」がある。
大腸がんの3大自覚症状は「便秘、下痢、血便」。便秘と下痢を繰り返すのも含まれる。このような症状が続くなら、疲れやストレス、痔のせいと自己判断せず、消化器科の受診を。
 では、腕のいい内視鏡医を見つけるにはどうしたらいいか。「内視鏡医の腕は検査・治療数が目安になる。クリニックでも年間2000~3000の症例があれば相当の実績。総合病院なら、新聞社などで定期的に発刊されるデータブックも参考になる」と吉田講師はアドバイスする。
飲酒や肥満がリスク大! 生活習慣と大腸がんの関係
大腸がんに関しては欧米型の肉中心の食生活が良くないといわれるが、実は確実視されていない。確実な因子は飲酒で、量が多いほどリスクは上がる。肥満もほぼ確実なリスク因子。一方、適度な運動はリスクを下げるほぼ確実な要因であることがわかっている。(データ:国立がん研究センター予防研究グループ「日本人のためのがん予防法」平成28年2月第3版より抜粋)
【大腸がんの最新治療法】
遺伝子検査に基づく「個別化医療」 変異別に薬が選択できる時代に
 がんは正常な遺伝子が老化や紫外線によるストレスなどさまざまな原因で変異し、異常な増殖を繰り返して発生する。研究が進むにつれ、変異した遺伝子が同じなら臓器にかかわらず同じ薬の効果が期待できることがわかってきた。
遺伝子変異で合う薬がわかる
従来の治療 臓器別のがん治療薬を使用
これまでのがんの治療薬は、がんが発生した臓器によって決められており、大腸がんなら大腸がんの治療薬として認められているものしか使えなかった。
ゲノム治療 遺伝子変異に応じた治療薬を使用
同じ種類の遺伝子変異があれば、違う臓器で認められている薬の効果が期待できる。
 こうした流れを受け、昨年、一度に複数の遺伝子を調べる「がん遺伝子パネル検査」が国内で保険適用となった。手術などで摘出した腫瘍組織から、特にがんに関連の深い数十~数百程度の遺伝子変異を調べるというもので、現在は、標準治療が終了した患者が対象となっている。
大腸がんと関連の深い遺伝子
RAS 細胞の増殖を伝える働きを持つ遺伝子の一つ。変異があると薬物治療で使われる「抗EGFR抗体薬」が効きにくい。大腸がん患者の約半数が該当。
BRAF 細胞増殖に重要な働きをするBRAFというたんぱく質を作る遺伝子をBRAF遺伝子という。変異があるとがん細胞が増殖しやすいため、再発・転移もしやすい。大腸がん患者の5~15%に見られるとされる。
MSI マイクロサテライトと呼ばれるDNA上の塩基配列。陽性の場合、遺伝性大腸がんの一つリンチ症候群が疑われる。また、ニボルマブなど免疫チェックポイント阻害剤が効きやすい。大腸がん患者の約10%が該当。
効果的な治療方針を決めるために、術後早いタイミングで大腸がんと関連が深い遺伝子変異を調べる検査が導入されている。
遺伝性大腸がんとは
大腸がんの5%程度は、親から受け継いだ病的変異のある遺伝子が原因の遺伝性大腸がんが占める。親戚に大腸がん患者が多い、親兄弟が若くして患い自分も不安な場合、遺伝カウンセリングを受ける手もある。遺伝外来など、専門の外来がある病院へ問い合わせを。
ただし、パネル検査で変異が見つかるのは受検者の50%も、変異に合った薬物治療が受けられたのは10%程度というのが実情。また、「結果が出るまで2カ月かかり、せっかく合う薬が見つかっても間に合わないことも。もっと早い段階で受けられるようになることが望ましい」と話すのは国立がん研究センター東病院消化管内科の谷口浩也医長。
 こうした遺伝子変異を少量の血液で調べられる検査法、「リキッドバイオプシー」の開発も進んでいる。「現行のがん組織を用いた検査より患者の負担が少なく、結果も早く出るとされる。この検査で手術後、目に見えるがんがない状態での再発リスクを調べ、再発を抑える適切な薬物治療の選択につなげる臨床試験も始まっている」(谷口医長)。
遺伝子変異をまとめて調べる最新検査法
検査の
種類 リキッド
バイオプシー がん遺伝子
パネル検査
検体 血液 がん組織
検査概要 少量の採血で血中の遺伝子を調べ、がんの早期発見や治療薬の選択に役立てる。一度に複数(現在のところ70程度)の遺伝子を調べる方法や、特定の遺伝子変異を調べる方法がある。 腫瘍組織からがんに関係する数十~数百ほどの遺伝子を一度に調べることで変異に応じた治療薬の選択に役立てられる。がんの悪性度や診断を確定させる補助にもなる。
メリット・
デメリット 採血で済むので負担が少なく結果も早いとされている。遺伝子によっては検出しにくいものも。 一度に多くの遺伝子変異を調べられるが、結果が出るまで2カ月程度かかる。遺伝子変異が見つかっても適応のある薬がない場合も。
保険適用 RAS遺伝子検査キットは近々保険適用の見込み 適用(標準治療が終了した患者対象)
費用 2万2500円(RAS遺伝子検査。3割負担) 16万8000円(3割負担)
(取材・文:福田(渡邉)真由美/イラスト:進藤やす子/図版:三弓素青/グラフ作成:増田真一/構成:堀田恵美)